花の嵐

花series second2


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「そんな怖い顔しないでくれないっすかね」
雨宮はにっこり笑って両手を上げた。
「あんたが訳の分からんことを言いよるからやないの」
「だって、そうじゃないっすか?眞澄さんはいつまでも鬼塚組の下の地位に居ることに辟易とし、苛立ちを覚えていた。そんな時に声をかけてきたのが来生っすよね?で、吉良を攫うことになった。今回、ここまで内部事情が漏れたのは、その時のことが原因なんすよ」
「えらい言い切るやないの。何や確証あってのことなんやろうね?」
「俺だってバカじゃない。自分が言っていることの重要性くらいわかってますよ」
御園は雨宮を鼻で笑って、頬杖をついた。
「ほな、それが間違いやったときは覚悟あってのことなんやね?」
「ちょっと、雨宮さん…」
さすがにヤバイよと静が雨宮の腕を突いたが、雨宮は悠然と笑みを浮かべて御園を見据えた。
「眞澄さんが昔でいう犬小屋に放り込まれていた時に、あんたが躍起になって動いていたことは知ってます。それって来生の息のかかった人間が仁流会に入り込んでいたから…じゃないんすか?まぁ、排除はしていったようですけど、全部は排除しきれてない…つうことっすよね?」
「さぁ、どへんやろか?あん時は眞澄がアホなことしはったさかい、俺が動くしか仕方あらへんかっただけで躍起になっとった訳やあらへんよ?」
御園は余裕さえ窺いしれる笑みを浮かべ、身体を少し傾けて右手で顔を支えるように体勢を崩した。
「俺、バロックって店に内偵に入ったんっすよね」
雨宮の言う店の名前に、御園が目を細めた。
「知ってます?ショットバーなんすけどね、バロック」
「知ってるも何も、うちの経営しはる店舗やないの。まさか心はんの飼い犬に入られてるやなんて、バイトやて面接は厳しゅうせなあかんねぇ」
「はは、すいませんね。で、俺が調べてたのは、スクランブルっていう違法薬物のバイヤーなんすよね」
「辻坂のこと言うてるんやろ、もうええわ。難儀やわ。俺、そうゆーん苦手やさかい」
御園は手をオーバーに振って、俺の負けと卓袱台に顎を置いた。
「さすが、噂に聞くだけあってええ耳しとるみたいやねぇ。確かに、仁流会内部に来生ん人間が入り込んでもうとるんは確かや。そん辻坂ちゅうんも来生ん人間や。せやかて、それが眞澄のせいやちゅうんは見当違いやろ」
「イースフロントって知ってます?」
「鬼塚組のフロント企業やないの、知らんわけおへん。バカにせんといて」
御園は少し不貞腐れたような態度で顔を上げると、雨宮に舌を出した。何だか可愛らしい人だなと静は小さく笑った。
「愚問っすね。まぁ、そのイースフロントは業績も右肩上がりで一流企業と呼ばれる一つなんすけどね、ぶっちゃけ鬼塚組のフロント企業でありながら内部はホワイト企業なんすよね」
「まどろっこしい言い方せんといて」
「怒んないでって。そのイースフロントって上層部の一部に鬼塚組の人間が入ってはいるんすけどね、業務内容は組とは無関係のことばっかだし大きく言えば99%は堅気、一般の人間が社員をしてるんすよね。だからフロント企業だって知らずに入っちゃう人間も多いんすよ」
「そのうち訴えられたらええんやわ」
もう完全に不貞腐れてるなと静と雨宮は苦笑いをした。当の御園は雨宮の茶菓子に手を伸ばし、それに噛り付いていた。
「イースフロントも鬼塚組も俺にはあんまり関係ないことなんでいいんすけど、ここまでクリーンな企業として業績伸ばしてるのに、この間、鬼塚組のフロント企業っていうのが目の当たりにされた事件が起きたんすよね。それがなかなか豪快で、そこを退職した元社員っていう人間が火炎瓶持って正面玄関から突入してきたんすよ」
「楽しいやないの」
「まぁ、そうっすね。で、その時の元社員を調べたら覚せい剤の陽性反応が出たんっすよ」
「……」
「セックスドラッグって知ってますか?」
「知っとるよ」
「その元社員が堕ちた罠っすよ」
「何が言いたいん」
御園の目つきが流石に険しくなった。だが雨宮がそれに怯むわけもなく、話を続けた。
「眞澄さんは以前、来生と接近したときにヤクの取引を持ちかけられてた。それを受けたから、辻坂がバロックに居たんすよね。でも、組長との一戦があって来生との取引は頓挫した…。だけど相手は、じゃあしょうがないって引き下がるような奴じゃない。来生はまるでウイルスのように仁流会の内部に入り込んで、中から侵食していったって感じっすかね?」
「あんたんお伽話は嫌いやあらへんけど、眞澄がどないかせんでも来生なら自分の力で内部に入り込むくらい容易いんやおへん?確かに辻坂はうちの店おったけど、それだけのことや。辻坂はもうおらんし、眞澄も来生とは切れとる。やのに眞澄のせいやて言いはるん?」
「お伽話っすか?辻坂が入ったことで、眞澄さんが思ってたよりも状況は悪くなってたんじゃないんすか?そもそもあの事件がなけりゃ、入り込むのは不可能だったと思うんすよね。表側には番犬の明神組が居て入り込む余地はない。でも、裏口の綻びがあるところからなら容易さもある。綻びさえ作れれば良かったんすよ」
「眞澄が辻坂を入れたことで、そん綻びが出来たって言いはるん?」
「仁流会に長く身を置く御園さんなら、分かってるんじゃないすか?綻びは内部からしか作れないってね」
「耳痛い話やないの」
御園が肩を落として嘆息した。雨宮はそれを見て指を鳴らした。
「お伽話じゃないってことっすよね?」
「まぁ、せやねぇ…。確かに辻坂んせいで内部事情が漏れとったんは事実や。更にはどないやったか、下部組織にけったいな組が入り込んで来よった。表向きは問題あらへん、仁流会に尽くして上納金もしっかり納めとる。やけど、裏での動きがおかしかった。うちの組はあんたらみたいな犬を飼うてへんから、それを調べるんに時間がかかりすぎよってねぇ。分かって引きずり出した頃には、あんたの言うウイルスみたいにちっさいのんが他所の組に舎弟やらなんやらで入り込んでもうた後やったわけ」
「それを上に報告もせずっすよね」
何もかもお見通しかと、御園は両腕を交差させてその上に顔を乗せた。そして何かを企むような顔を見せると、ヘラっといつもの笑顔を見せた。
「なぁ、うちの店に内偵に入ったってことは、今の話も全部、北斗も知っとるんや?」
「今の話は以前の話っすよ。俺がバロックに内偵に入ったのは、仁木不動産の岡安の動きを探るためっすよ」
「ああ、岡安んことを調べたんはあんたなん」
以前、眞澄は静を攫った時に外部とのコネクションを得る代わりに、来生の仕事の片棒を担いだことがある。御園も知らない話で、心から聞かされた時は驚きと怒りで爆発しそうになったのを覚えていた。
その時に仲介役として眞澄が使っていたのが、元組員の岡安だった。
「その岡安の時の話っすね。だから今の現状は言ってないんで、知らないはずっすよ。俺、裏で暗躍してるけど全部を報告してるわけじゃないんすよ。100%の忠誠誓ってるわけじゃないんで。でも今回の件が動き出した時に、組内部の情報が洩れすぎだと思ったんす。例えば、彪鷹さんっすけどね。あの時間にあそこに居るっていうのが何故洩れたのか。知っての通り、うちは秘密主義なところがあるんで、実際、彪鷹さんの復帰を知らない人間も多いんすよ。それを、第一射撃から彪鷹さんを撃ち抜いた。あの日に会合があることを承知な上、彪鷹さんを知っているということっすよね。で、風間組への襲撃。仁流会会長である風間組の中枢を襲撃して、大幹部を殺せるって普通じゃ不可能でしょ?風間組に関しては内通者が居るのかもしれない。どっちにしてもどっかで洩れてるんすよ、全部。それで勝手に調べたら、眞澄さんに繋がったってわけ」
静は思わず息を呑んだ。cachetteに居るときだけではなく、雨宮とは一緒に行動することが多い。雨宮が一人になる時間は少ないと言っても過言ではない。
その僅かな時間で雨宮は様々なことを調べあげているのだ。そして雨宮の言うそれは、御園も幾つか思う節があるのか上体を起こして思慮深けに沈黙したあと頼りなさげないつもの笑みを浮かべた。
「なるほどなぁ。これが裏鬼塚の実力…。そりゃ、うちでは敵わへんわぁ。あんた、うちの子にならへん?」
「俺、ヤクザ嫌いなんで」
雨宮が鮸膠も無く言うと、御園はふふっと笑った。
「よぉ言うわぁ。ほんで、今ん話、ほんまにあんたしか知らんの?」
「疑い深いんすね、無理もないかもしれねぇけど。俺、報告すべき情報と取っておくべき情報を使い分けてるんで。今の話は…俺とこいつとあんたしか知らないっすね」
「ほな、俺の血を好きなだけあげるさかい、それ、あんたん胸に仕舞っといてくれへん?」
「眞澄さんの立場っすか」
御園はふんわりと笑って、自分の指と指を交差させて思慮しているようだった。御園はいつも笑っているなと静は思った。
何を考えているのか分からないと聞くが、分からないのではなく悟られないようにしているのだろう。
寺院の家で生まれ育ち幼い頃から説法を聞いて育ったのであれば、腹の中を隠すことくらい容易いのかもしれない。
「御園さん、とことんヤクザ似合わないっすね」
「失礼やねぇ。やて、そうやね、眞澄ん立場やね。うちのんも、今は心入れ替えて組んために仁流会んために動き出したとこやのに、今回の件の原因が己れがしでかしたアホなことのせいやて分かったら、心折れてまうかもしらんやろ。うちのんはあんたんとこの大将と違うて繊細な子やねん」
「仁流会内部に入り込んだ輩はどうするんすか」
「うちの組にはあんたみたいに裏側で動く人間がおらんかってんけど、最近、それが戻ってくることになってん。まぁ、今回ん件があって戻ってくることにならはったんやけどな。そないなれば一気に叩くよ」
「そんな細々してても追いつかないんじゃないんすか?もし、今回、協力してくれるなら俺も力貸しますよ」
「あんさんが?」
御園が意外そうな顔をすると、雨宮は自信に満ち溢れた顔で御園を見返した。
「俺、あんたのこと気に入ったんすよね。だから力貸しますよ。結構、お買い得だと思うんすよね。裏鬼塚で、あの崎山雅の飼い犬っすよ?悪い話じゃないでしょ」
「そら、そん崎山雅に関係なく、あんさん個人でちゅうこと?」
「そうっすね。俺、個人…まぁ、俺もそこそこ多忙なんで100%フォローは難しいっすけど、調べろと言われたことは誰よりも早く調べ上げる自信はありますよ。別に見返りは求めねぇけど、そうだな、そっちで得た情報は回してもらいたいかな」
「ええねぇ、それ乗った」
御園はそう言って妖艶に笑うと、雨宮と拳を合わせた。雨宮は御園の見た目を裏切る潰れた拳に眉を顰めたが、御園はやはり笑みを絶やさなかった。

それからすぐに御園を連れて関東へ戻った。駅に着いてすぐにパーキングに停めていた車に乗り込み病院へ向かった。
ようやくここまできた。この逼迫した状況で勝手な行動をすることは、命知らずと言っても過言ではない。ビンタどころの騒ぎではない。
だが御園を連れてこれたことで、そこに恐怖心はなかった。ここまできたならと静も雨宮も観念のほぞを固めていたのだ。
「何やの、あんたら元気あらへんなぁ」
「気にしなくていいっすよ」
雨宮はそう言って、静はそれに同意するように頷いた。
病院へ着くと裏口から中へ入った。中へ入ってすぐに相川が居て、御園を見るとギョッとしたような顔をした。
部屋から出てきた橘も驚いた顔をしていた。雨宮は橘が出て来た部屋のドアを掴むと、そのまま一気に中に入った。
躊躇したら負けだと思ったのだ。
「あの…」
「ああ!?雨宮、てめぇ!!!」
すぐに崎山の怒鳴り声が聞こえて、同時に近くにあったのかプルも開けられていない缶コーヒーが飛んで来た。
それは風を切るような音を立てて、ドアの向こうの壁にめり込んだ。
「プロ野球選手やん…」
静の後ろで御園が小さく笑ったが、静は笑えなかった。あれ、当たってもいいって思ってるやつだと。
「何の面下げて現れやがった!!」
中から手が伸びて雨宮を掴もうとした崎山の腕を、静の後ろの御園の腕がにゅっと伸びて掴んだ。
その動きに何故かゾッとした。まるで腕だけが違う生き物のような動きに見えたのだ。
「ね、これ、どういうこと?」
崎山は自分の腕を掴む手の相手、御園を見ると何が可笑しいのか笑った。だが、それを見た相川が俊敏な動きで部屋から離れたのを見て、静は危険を察知した。
案の定、次の瞬間には崎山は御園の腕を反対の手で掴み引っ張った。間に挟まれた静もろとも引っ張られ、そのまま静は崎山に足を掬われた。
「うわ!!!」
倒れる!!と思ったが、掬われた足を御園に後ろから蹴られてどうにか体勢を整えたが、崎山は引っ張った御園の腕を静の首元に折り込み押し付けて来た。
御園に腕を回されたような状態になり、一気に香の香りが強くなった。
「ちょ!!」
俺を使うな!!!と抗議しようにも、御園の腕で喉を軽く絞められていて声が出ない。御園が腕に力を入れているので完全に絞まることは免れてはいるが、この人、俺ごとどうにかするつもりだ!と静は崎山に抱きついた。
そしてそのまま御園ごと後ろに下がると、御園が押し付けられる状態で壁に付いた。
「遥々、京都から来たんに、えらい歓迎のしかたやないの」
「うちのクソ2人が考えもなく連れてきたようですけど、今、取り込み中なんですよね?出直してくれません?」
「そへんなこと言われて、はい、そないですかゆーて帰られへんやろ?」
「何しに来たのか知らないけど、俺、あんたのこと嫌いなんですよね。あんたっていうか、鬼頭組そのものがね」
「済んだことをいつまでも女みたいにネチネチ言うんはあかんえ?顔も女みたいで中身もやなんて、見たまんまやないの」
女みたいな顔した連中が三人団子になって、どういう言い合いだと雨宮はそれをぼんやり見ていた。
止めるにしても三人に一番近い場所に居る橘は崎山にビビって使い物にならない。相川なんて危険回避と傍観者を決め込んでいる。
これ、ババ引くの俺しか居ないじゃんと雨宮は眉尻を下げて、三人に歩み寄った。
「何してるんだ」
とりあえず崎山を引っぺがそうとしたとき、奥から声が掛かった。見れば相馬だ。
雨宮は相馬を見ると此れ幸いとばかりに、すぐに後ろに下がった。
「何の騒ぎだ…。え?」
「北斗やないの、こんばんわぁ」
「そ、相馬さん…」
静は安心したように息を吐いて、そこでようやく崎山を離した。

「お前がボンベイ型?」
とりあえず全員で部屋に入ると、雨宮が簡単な説明をした。まさかの事実に部屋に居た崎山までもが驚いた顔で御園を見ていた。
その顔に満足したように、御園は橘が用意したコーヒーを口にすると口角を上げて笑みを作った。
「救世主やろ?心はんと同じ血液型やてな」
御園の言葉に崎山の刺すような視線を感じた二人は、速攻で視線を外してそっぽを向いた。
「心はんがやられて風間のオヤジもやられて…梶原はんは死んだんやてな。うちの親父と眞澄が大慌てで出ていったさかい仁流会が壊滅的な状態やていうんは知っとったけど、まさかここまで逼迫してるとは思わんやったわ」
相馬は御園の前の席で沈思黙考していたが、吐息とともに首を振った。
「分からないな、なぜお前が?」
「なんやて?」
「眞澄さんは知っているのか?いや、知っていたなら行かせるわけがない。万が一、何かあればお前の命すら危ういんだ。そんな危険を冒してまで?何が目的だ」
相馬の疑念に雨宮と静はギクリとした。まさか両手を広げて大歓迎、ありがとう!恩に着るよ!と諸手を挙げて歓迎するわけはないとは思ったが、こんな危機迫った状態の中、同じ仁流会の人間相手にここまで訝しむ必要はあるのだろうか?
静は時間だけが刻一刻と無駄に過ぎていくのを感じ、憤懣やるかたない表情で二人を見ていた。
「目的てなぁ、人聞きん悪い話やないの。俺かて鬼頭組の若頭補佐やからねぇ。何ぞあるんは困るんよ?せやねぇ、目的はちゅうたら仁流会の危機を救うため…やね」
「見え透いたお為ごかしはやめろ」
長年の軋轢の積み重ねか、相馬は御園に咎めるような視線を向けた。御園はそれに長嘆して両手を広げた。
「ほな、いらんの?心はんが助かるんやったらええんよ、俺もわざわざ貴重な血ぃあげとうないしなぁ」
「若頭…」
崎山が思わずという感じで相馬を呼んだ。
「仁流会の危機を救うためと言うが、なら何故お前は動かないんだ?」
「俺?俺やて動くときは動くけどなぁ。風間は明神が厳戒態勢で守っとる。うちのんかて行ってる。北斗もよぉ知っとるやろ。俺は最終兵器や」
御園が言うそれに相馬は鼻を鳴らした。恐らく、心と同等かそれ以上か。この男の実力は確かだ。なのに眞澄は頑なに御園を前線に立たすことはしなかった。
会合などでは渋々と連れて来ている感じではあったが、まさかその理由が…。
「虚心坦懐に話し合えってことか」
「そうそう、北斗のそうゆー賢いとこ好きやで。眞澄に知られる前にやってまいまひょ」
相馬が崎山に視線で合図を送ると、崎山はすぐに部屋を飛び出した。それにようやく静は安堵した。まだ助かったわけではないが、一歩前進したのだ。
「崎山雅…。かあいらしい子やねぇ。毛ぇ逆立てた猫みたい」
「それはそうと、お前のところには写真はまだ送られてきてるのか?」
「写真?さぁなぁ。やて、ボーガン車に撃ち込んできよったガキは捕まえたんやろ?」
「ブラックカースのことか?お前、本当に何も知らないんだな」
相馬が呆れたように言うが、御園は気にもしてないようで視線の絡んだ静ににっこりと笑いかける余裕さえ見せた。
「眞澄は必要なことしか言うてこうへんし、俺も聞かへん。俺が出なあかんときは、ほんまにどへんもならんときや」
「ボンベイ型だと昔から知ってたのか?」
「俺?当たり前やん。せやから交通事故やなんやは気ぃつけろって、親兄弟に口すっぱく言われたわ。せやけど、どへんもならへんやろ?普通に歩いとっても車が突っ込んでくる時代なんやし」
「眞澄さんはいつ知ったんだ?」
「俺を、組に入れる前」
「知ってて入れたのか?」
「北斗、そらちゃうよ。知ったから、入れたんや」
御園にしては珍しく、どこか挑戦的な笑みを見せた。