15. aphrodisiac

花series Extra Shot


「くそっ…相川っ!」
ドンッと部屋全体が揺れるほどの力で壁を殴った。そうしたところでどうしようもないのに、雅はその熱をどうにか蹴散らそうともがく。
マンションまで這うように帰って、台所で水を無理矢理に飲んで喉に指を入れて吐いたところで、どうにもならなかった。
悪夢だ。雅は頭を掻き毟り、また水を飲んだ。口を軽く濯いで、ネクタイを緩めて深呼吸をする。
「落ち着け」
諭すように自分に言う。だが、怒りとか苛立ちとか殺意が邪魔をする。それさえ退ければまた違うはずだ。
「落ち着け」
とまた、呟いた。ギュッとシンクを握って真っ暗な部屋の中で、まるで獣のように息を潜めた。
「落ち着け!」
もう一度、今度は声のボリュームをあげた。
声だけは異様に冷めている感じがする。このまま迸る熱を冷ませば大丈夫だ。落ち着け。熱を冷ませ。
「そうだ、落ち着け」
雅は小さく呟くと息を吐いた。すると玄関で物音がした。その音が誰が出したものなのか瞬時に分かり、一気に体内の熱が爆発した。
カチッとスイッチが入った。

「あれ?真っ暗?」
玄関を開けて帰ってきた久志は、おかしいなと首を傾げた。玄関の鍵は施錠されておらず、玄関ポーチには雅の革靴が珍しく転がっていた。
いつもはきちんと揃えられていて、脱ぎっぱなしにすることが多い久志はいつも雅に怒られるのに、慌てて脱いだのか右も左もごっちゃになって転がっている。
「雅?」
部屋も真っ暗で、カーテンの隙間から覗く月明かりが僅かにリビングを照らしていた。作業着のつなぎの前のジップを一気に下ろして、腰の辺りで止める。
「雅?」
ドアのない雅の部屋を覗いてみるが、誰も居ない。
「かくれんぼ?」
まさかねと部屋の一番奥、寝室にしている場所に向かう。まるでホラー映画でも見ている様な、実際に体験しているような変な緊張感で鼓動が上がった。
真っ暗な部屋の中、灯りを点ければいいのに主人公は暗闇の中、部屋の奥へと進んで行く。
ベタな展開なのに、それに幾度となく妙な汗を掻いた。まさに今がその状況。子供じゃないが、暗闇は気持ちが良いものではない。何歳になっても、どこか居心地が悪いものなのだ。
「帰ってへんのー?」
寝室はもともと和室だったものにフローリングカーペットを敷いて、無理矢理に洋室風にして大きなベッドを置いた。窓にはロールカーテン。あまり広い部屋ではないので、ベッドだけで他に家具はない。
やはり暗いそこには久志が思う様な、例えばマスクを被った殺人鬼が斧を振り上げて襲って来るなんてことはなく、ただ、ベッドだけがあった。
「はぁ?」
もしかして、帰ってきて違う靴で出掛けたのか?慌てていて、施錠忘れたとか。でも雅に限ってまさかそんなこと。
久志は作業服のポケットから携帯を取り出した、と、その時、ドンッと背中を押されてそのままベッドにダイブした。
「いってー!!!」
柔らかなスプリングのおかげで痛い訳がないが、そう叫ばずにおれないほどに容赦なく押されて声を上げた。
俯せで倒れたその背中に、覚えのある重みがかかる。首元に熱い息がかかった。
「何?ちょっと、熱烈やん」
腕を背中に回して、その重みの相手の顔を探った。するとその指を銜えられて、ちゅっと吸われたので驚いて顔を向けた。
「ちょ、何?」
「落ち着け」
暗闇に慣れた目が、その暗闇の中で妖艶に笑う雅を捕らえた。赤い舌を出して己の唇を舐め笑うその姿は、いつもの艶美な姿ではなく淫猥そのもので、久志は息を呑んだ。
「みや…」
「しー」
まるで子供に言う様に、唇に指を立てて言葉を遮られる。雅はゆっくりと腰を上げると久志の身体をひっくり返して、その腹に腰を下ろした。
シュルっと上品な生地が擦れる音だけが部屋に響く。雅はその細い首からネクタイを解くと、ふふっと笑って久志の目元を覆った。
きゅっと括られたそれのせいで、久志は今よりも真っ暗闇の世界に落とされた。そのせいで聴覚が異常に発達して、雅がシャツのボタンを外す音や荒い息づかいまでが手に取る様に分かる。
「…ん」
溢れた吐息に首の裏を舐められた様な刺激が襲う。次第に息が上がって、掌が記憶している絹の様に滑りの良い肌に触れたくなって気が付いた。雅が、少しづつ腰を揺すっている。久志の堅い腹筋に己の性器を当てているのだ。
「雅…?」
普段の雅ならば絶対にしない事に、久志が戸惑いを見せると雅はその唇に吸い付いた。
何百回、何千回、何万回。数えられないほどに交わした口づけは、いつまでも甘く久志はすぐに酔いしれる。舌を絡み合わせて滴る唾液を吸う。
普段と違う雅に戸惑いながらも、その細い腰に手を回すと、ぱちっとそれを叩かれた。
「大人しくしてろ」
耳元で囁かれて、ぺろっと舐められる。一体、何がどうしてこうなったのか検討もつかないが、悪い気なんて全くしない。寧ろ大歓迎だ。
ジジッとチャックの音がする。腰で止めていたつなぎのチャックを下ろす音だ。視界を遮られると、頼るものは聴覚のみだが自分が寝転がった状態で何かされるというのはあまりないことなので、変に緊張する。
熱い息が首元にかかる。少しだけ顔をあげて首を曝すと、そこに熱を持った様に熱い舌が這わされる。首の筋に沿って舌が動き、時折、緩く吸われる。そうされながら、つなぎの中に不埒な手が入り込んで来た。
「ん…」
「気持ちいい?」
「気持ちええっちゅうか」
擽ったいっていうか。腹の辺りから中に着ていたTシャツを引きずり出され、捲し上げられる。いつもは成田がそうしているように、雅が何の面白みのない久志の乳首をちゅっと吸った。
「いや、ないやろ」
「いつも久志がやってることだよね?」
カリッと歯を立てられ、ビクッと腰が浮くと雅が小さく笑った。
「はい」
徐に手を取られ、導かれる。すべすべと絹の様に滑らかな肌。指先で撫でながら、確認する様に腹や背中を撫でる。柔らかさなんてない。久志達の年代になれば、早い奴は横っ腹や背中に女のそれとは違う、別の柔らかいものが付くのだが勿論それもない。
締まっていて、骨と筋肉で堅くて、きめ細やかな肌だとか何だとか言っても、やはり男の身体なのに興奮は高まるばかりだ。
舌舐めずりをして、臍から少しずつ上へと探る様に手を動かすとツンと尖る果実を見つけ、ゆっくりと捏ねた。
「やっぱ、こっちやろ」
「…ん」
捏ねてやると、それに合わせて腰が揺れている。見なくても分かる、きっと、今頃熟れた果実のように真っ赤に色づいていて、雅の目元は赤く朱を差しているはず。
吐息だけの部屋の中、カチャカチャとベルトの音がして、その音に息を詰めた。
「久志…」
腹の上が軽くなる。雅が腰を上げたのだ。
布のすり切れる音と、ベッドの沈む感覚。手を伸ばすと滑る様な肌に触れた。少し堅い筋肉と骨。脚だ。
「脱いだん?」
開いたその口に指が入りこむ。それを順応に吸うと雅が吐息を漏らした。
「ね、舐めて」
「……」
マジで。と声に出さなかっただけ賢いと自分を褒めてやりたい。何だか分からないが、雅の中で妙なスイッチが入ったらしい。
これはもう、あやかる他にないだろうと久志は舌を出した。
「乗れ」
撫でていた脚を掴んで引っ張る。今は多分、雅は恍惚とした表情を浮かべているはず。雅は性に関しては少しマゾだと、久志は密かに思っていた。

「あっ!!ああああ!!」
久志の”命令”通り、久志の顔を跨いだ雅はベッドに手をついて声を上げて啼いていた。とっくに久志の目隠しは取れ、反対に雅はその両手を拘束されていた。
気が遠くなりそうなフェラチオをされながら、後ろの莟に指を捩じ込まれ雅は何度か達していた。だが、雅のペニスは萎える事無く、そして雅もまた、久志にもっとしてと強請った。
達しても、達しても、雅の中の欲望は消える事無く、まだ欲しいと貪る。男の顔を跨いでペニスを銜えさせた光景に奮え、蜜を垂らす。
そういう行為が当たり前かのように、抵抗なく後ろの莟は美味しそうに久志の長い指を飲み込み、淫靡な雅はその中の痼りを自分から当たるように腰を振る。
「やっ!!またイクっ!!久志!!イクっ!イクっ!!出ちゃ…!!」
ブルッと全身を奮わせたところで、久志が後ろから指を抜いて巧みな舌使いをしていた口を離した。
急に何もないところに放り出されたような雅は、潤みきった瞳で久志を見た。
「なんで、ね、して、して」
いつもは雄弁に辛辣な言葉を吐く口が、媚薬のように甘い言葉で久志に強請る。久志はそれに笑って雅の身体を持ち上げ起き上がると、ベッドに雅を一人置いた。
卒倒しそう。と思った。両手を拘束され、白い肌は朱に染まりその白い股の奥には涎を絶え間なく垂れ続ける雄の象徴。いつもは冷たささえ伺える目は、情事に酔いしれた娼婦のように男を誘う。
「久志…」
「一人で後ろ、して達って」
「…え?」
何を言われたのか分からない雅は、少し考えてすぐに首を振った。
「い、いや」
「だめ」
久志は雅の拘束を解くと、その細い指を舐めて濡らした。それだけで身体を震わすくせに、もう、一人でも何でも達したくて仕方が無いくせに。
「もう、後ろぐちゃぐちゃやから、すぐ入る」
ぐいっと指を勃ち上がり蜜を零すペニスの下に持って行き、物欲しそうに伸縮する蕾に当てると久志の指と一緒にそこへ雅の指を捩じ込んだ。
「い…や…あぁ!!!あ…っ!あ…あっ…!!!!あ……あっ!あー!」
強い刺激に背を仰け反らせ、空いている手で必死に久志にしがみついて来る。
「ほら、ここ」
少し奥。ペニスの裏側の壁の、久志しか知らない秘密の場所。雅は手は大きくはないが、指が長いのでギリギリそこに辿り着く事が出来た。
「あぁあっ…!!ぁ…!…あぁ!あぁああ…あっ!!はぁっん…んっ…っ…!!」
中を弄る様にして指を動かさせながら、久志だけずるりと指を抜くと雅がまた首を振った。
「いや、っ…!久志、イヤ」
「やれ」
少し冷たい言い方で突き放すと、雅は泣きそうな表情を見せたがすぐに脚を広げて行為に耽り始めた。
まるで娼婦の様に脚を広げ、自ら蕾を犯す。腰を揺らして涎を垂らし、喘ぎ、涙を流しながらもその手を緩める事はない。
ペニスが零した涙が行き場を無くし、そこに辿り着いて卑猥なサウンドを大きくする。雅は色を付けるならば赤い、それも深紅の吐息を漏らしながら自らを犯し続けた。
その普段の姿からは想像も出来ない様なそれに、久志は息を呑んで、そこでようやく腰の辺りで止まっていたつなぎを投げ捨てて雅と同じ姿になった。
雅の卑猥そのものの姿からか、久志のペニスも痛いぐらいに勃ち上がり蜜を零す。それをゆっくりと扱いてやると、全身に痺れが走った。
「やべ、すぐイキそう。雅のオナニー見ながらってなぁ」
こんなに若かったかな?と冗談を言いながら、腹に付きそうなほどに反り返ったペニスを笑う。
ぐちゅぐちゅといやらしい音が部屋に響く。熱い視線を感じて目をやれば、雅が恍惚とした表情で久志のペニスを見つめていた。雅も久志の自慰行為から目が離せないようだった。
「俺等…って、かなり変態や」
背中を一気に痺れが駆け上がって、自然と目を瞑った。熱を扱く手はスピードを上げると手を汚す蜜は増えた。
久志はぐっと奥歯を噛み締めると雅を押し倒し、その顔に熱い欲望を降り注いだ。
「…っつ」
「あぁ…あぁ!っ…!!んん!!…ー!!!!」
久志の下で雅が声を漏らした。仄かに赤く染まった身体が小刻みに震えている。そのしっかり締まった腹を見れば、雅が放ったものが小さな水溜まりを作っていた。
「顔射されてイクとか、雅ってばエロいなぁ」
その綺麗な顔を汚すのが、ひどく興奮する。なんて変態すぎるなと自嘲して雅の口に少し萎えたペニスを近付けた。
「これ、入れてほしい?入れて、奥めちゃくちゃに突いて、中で出してほしい?」
潤んだ瞳は久志の言葉に期待するような眼差しのそれに変わる。雅が性的に被虐的ならば久志は雅に性的に加虐愛に溢れるのだろうと思う。
もちろん久志はサディストではないし、雅には心底優しくしてやりたいと常に思っている。だが反対に、雅が望むのであれば何でもしてやりたいとも思う。結局、久志は雅にベタ甘なのだ。
「久志…」
雅が熱の籠った声で久志を呼び、近付けられたペニスに舌を這わす。いつもは凛とした表情しか見せない雅が、必死に口を開けて頭を擡げたペニスを銜える画は、思わず息を呑む。
男が自身の象徴であるそれを口で奉仕させるのは、相手への征服感が得られるからだと聞く。気持ちも良くて、征服感も得れて…。
だが、久志が雅にこういう事をさせるようになったのは、ここ何年か前からだ。
「はは…やべ。また顔にぶっかけたくなるし」
柔らかい髪を撫でながら、少しづつ腰を動かす。それに合わせて雅も口を窄まし、舌を絡める。
先端を吸う様にして口を窄め、口の上顎部分に押し付ける様にして顔を動かして吸い付いて来る。久志はふふっと笑って、雅の前髪を上げて長い睫毛が震えるのを見た。
「雅は、何さしても、すぐに上手なるなぁ」
ぐちゅぐちゅと濡れた音が響く。息が上がり腰が震えた。
このまま、また放つのも勿体ないと、久志は腰を止めてゆっくりと雅の口から剛直を抜き出した。
「勃ったで?どないする?」
天を向いててらてらと黒光りするそれを雅の頬に当ててみる。雅はそれに息を荒くして、久志の身体を押し倒してベッドに寝かせた。
「今日は、えらい積極的」
今更、スイッチの入り方が過剰だなと思った。あまりの興奮状態で考えなかったが、雅が一人で後ろを犯して自らを慰めるなんて痴態を見せるなんてこと、今までなかったし、考えたこともなかった。
たまに意地悪をして一緒に指を入れさせた事はあっても、一人というのはしたことがないしするわけもない。
「え?ちょっと…」
何か、変じゃね?いや、変!!と思ったところでもう遅く、雅は解されたそこに久志の屹立を埋め込んでいった。
「ああっ…っ…!!あ!あ…あ!ああぁ!!ん…っ…!!」
「うわ…きっつ」
ぎゅーっと、咀嚼されているかのように、どんどんと飲み込まれていく。
このまま雅の中に入ってしまうんじゃないかなんて馬鹿げたことさえ思うほどに、細胞が久志に絡み付き、そこから久志を犯す。
「ひっ…んっ!あ、ああ」
ずぶずぶと長いペニスは全て雅に飲み込まれ、雅は性的な涙を流しながら久志の首に腕を巻き付けた。
「熱い…」
「雅のが、熱い」
腰に手を回し、雅の細い脚を自分の腰に回させる。もっと中に入りたくて、ぎゅーっと抱き締めてみると雅が身体を震わせた。
もう、変だとか何かを考える余裕は一切なくなっていた。
「奥、奥っ!」
「当たっとるな…。ここ」
少し腰を揺すると雅が腕に力を入れ啼いた。ぐちゅっと淫猥な音を奏でるそこは、刺激が足りないとばかりに伸縮して久志を急かした。
「くくっ…エロい」
黒い髪を掻き上げて、形の良い耳に舌を這わせながら、ゆっくりと腰を動かす。その動きに合わせて、雅が娼婦の様に腰をくねらせた。
「あ…ぁ…っ、あぁっ……!ああ、い……ぃ…や、い…や…あ!っ…!!んんーー!!!」
「嘘、めっちゃええ…」
「あんっ!ああ、久志、久…!」
腰に蛇の様に脚が巻き付いているせいで、なかなか上手く動けない。久志は腰の動きを止めると、その絡み付く脚を解いた。
「久志…?」
いやいや言うくせに、止めると抗議の目を向けて来る。どっちよ、なんて笑って久志は雅の中からペニスを引き抜くと、名残惜しさのせいか物足りなさのせいか雅の身体が震えた。
その身体をヒックリ返すと、そのまま膝立ちにさせて細くて引き締まった両腕を掴み後ろに引っ張った。
「え…?久志…?」
「これなら、めっちゃ動ける」
久志は戸惑う雅のそこへ乱暴にペニスを一気に突き入れた。
「ひっ!ああああああ!!!」
腕を引っ張ったまま乱暴に腰を動かす。パンパンと肌と肌のぶつかる音と雅の悲鳴が部屋に響いて、頭がおかしくなりそうな快感に酔いしれた。
「あっ!!ひさ、ひさし、ゆっくり…っ!んー!!!あ、ダメダメダメ!!ああああー!!!」
雅のペニスから勢い良く白濁が飛ぶ。ガクガクと痙攣する身体に、久志は容赦なく腰を穿った。
「ひ…ぃ…!!ああああ…あ…っ!ああぁ!やだ…ぁっ!やぁぁあ…!やめ…っ…!!んんーーー!!!い…!やぁ……!いや……あっ、ああ…あぁ…あぁ…!!」
「あー、イク。…イク、雅」
その白い先に見える快感の波を追って、久志は馬鹿みたいに腰を振った。雅がやめてと泣いたが、やめれるわけがない。
無理矢理に膝立ちさせた身体は、今にも崩れそうで、久志の攻めに何とか立っているようだった。その身体を引き寄せ自分の上に座らす様にして抱き締めると、雅の最奥で久志は熱を吐き出した。
「う…ぁ」
ぎゅーっと搾り取るように伸縮するそこに、思わず声が漏れた。最後の最後まで吐き出すと、雅の顔を無理矢理に向けてその唇を奪った。
舌を絡めて、口の中を隙間なく犯す。そうしながら真っ赤に染まった胸の果実を摘んで掌で転がした。
「…んっ!!んっ」
「…は、止まらへんし。このまま溶けるまでヤル?」
胸を弄る手を反対の手を、ぐちゃぐちゃに汚れた雅のペニスに伸ばしてみると、そこはまた勃ちあがっていた。
そんな雅の蜜壷に飲み込まれた久志のペニスもまた、芯を持ち雅を犯そうと臨戦態勢だ。
「セックス覚えたての猿みたいやな」
ふふっと笑って雅の身体を離すと、そのまま雅はベッドに手をついて四つん這いの格好になる。その姿勢のせいで、グロテスクな己を飲み込む雅の蕾があらわになった。
赤くなっているそこを撫でると、雅の身体が撥ねた。
「やだっ!!」
「雅。雅の中に、俺のグロいのんが入っとるで」
「あ…やだ」
ずるっと出て行こうと腰を引けば、雅の細胞が纏まり付いて出て行くのを阻む。肉がペニスに纏わり付く様子がよく見えて、生唾を飲んだ。
「気持ちエエなぁ…」
久志は呟いて、身体を倒して雅の身体に覆い被さった。
「気ぃ失うまで犯したるから、覚悟せぇ」
耳元で囁くと、まるで期待するかの様に久志を飲む込むそこがギュッと締まった。

「ふわぁぁあ」
事務所のガレージに久志の欠伸が響く。久志は大きく伸びをして、腰を回した。さすがにヤリ過ぎた。とか思っても、顔がニヤケて仕方が無い。
何だかよく分からないが、昨日は季節外れのクリスマスプレゼントでも貰った気分だ。
昨日は結局、宣言通りに雅を気を失うまで犯した。まさに猿というよりも獣。それでも朝には雅はベッドに居なかったのだから、まだまだ足りなかったななんて思ってしまう。
「ああ見えて、体力はあるもんなぁ」
「誰がっすか?」
突然に後ろから話しかけられ、ビクッと身体が震えた。振り返ると、そこには雨宮が居た。
「お、おう。ビックリするやんけ」
さすがというかなんというか、気配を消すことに関しては右に出る人間は居ないよなと、煙草を銜える雨宮を眺めた。
「仕事か?」
「報告です。ああ、知ってます?相川さん、崎山さんに殺されかけたの」
「…は?いつ?何してん、相川」
相川が崎山の逆鱗に触れるのは今に始まった事ではない。言うなれば組に入ってからの恒例事だ。だが、殺されかけたというのは流石の相川でもないことだ。
「いや、崎山、昨日はそんなこと一切…」
「殺されかけたのは、朝一。一応、俺も止めたし、あまりに凄まじいキレっぷりに佐々木さんも他の組員も止めたんですよ」
「何してん、マジで」
それはただ事ではない。でも本当に昨日はそんな雰囲気全然なかったし、それどころか…。
「何かね、昨日、崎山さんが頭イテぇって言うんで、相川さんが頭痛薬あげたんですって。それがね、女に使うはずの媚薬だったらしいですよ」
「…は?」
「結構、効き目が強力なやつだったみたいで。もしかして崎山さん、昨日、エラい目に遭ったんっすかね?」
「え?媚薬って…。え?相川は?」
「塩谷センセのとこ」
「塩谷センセって」
「全治10日らしいっすよ。今回のキレっぷりはマジでスゴかった。俺も肘喰らいました」
ね?と指差す口元は青く変色している。昨日の乱れっぷりはそのせいか!で合点納得だが、相川の惨状を聞くと思わず顔が引き攣る。
「まだ、キレてる?」
「キレてるでしょう。あの崎山さんが組長の前で、相川さんをボコッたんですよ?」
あ、ダメだ。終わった。まさに天国から地獄に突き落とされた瞬間だった。媚薬の効果のせいとはいえ、一人でさせ顔射までして、崩れるまで犯した。
相川がそこまでやられたということは、記憶があるということだ。あの、痴態の全てが鮮明に…。
「マジでか…」
「あれ?成田さんも、何か崎山さんに後ろ暗いことでも?」
「は?ないし。全然」
何言ってんのーなんて笑った胸中は穏やかではない。これは、地雷を踏んで更に地雷を埋め込んで踏んだ感じかもしれない。
流れ出る汗をどうしか抑えて、雨宮が去った後に慌てて雅に電話を掛けてみれば、何と着信拒否。
「マジでか!!!」
終わった。これは落ち着くまでというよりも、指一本触るまで1ヶ月はかかるかもしれないと久志は一人、落涙した。
そして、そんな久志の思いは的中して、一緒のベッドで寝る真ん中に枕のバリケードを作られ、指一本というよりも口も利いてくれない状態が一ヶ月も続いた。
いや、俺が悪いの?これ。なんて思いながらも口に出来るわけもなく、久志はその禁欲生活を指折り数えて耐え抜いた。
そしてやはり、成田も相川を殴って大喧嘩になったのだ。