17. 婬靡

花series Extra Shot


「雅!おい!雅!」
久志はずんずん前を行く雅の細い腕を掴んで、ようやくそこで自分の方を向かせる事が出来た。
鬼塚組本家の離れ。雅と二人で住む離れでのこと。
だが、振り向いた雅はというと頗る機嫌が悪く、青筋でも立てそうなほどに苛ついた顔をして久志を睨む様に見た。
「なに」
「何、やあらへんやろ。首、見せてみぃ」
久志は雅を引き寄せると、顎に手をかけ上を向かせた。スーツの襟元から覗く白い首に痛々しい赤い痣。
雅が長谷の所有するビルで襲撃を受けたものだ。
一つ下の階に居たのに、その異変に気付かなかった事が悔やまれ久志はその傷をそっと撫でた。
「赤こうなっとるし、傷にも…」
「平気」
その手を振り払う様にして、雅は靴を乱暴に脱いで家に上がる。几帳面な雅から想像もつかない行動だ。
離れのそこは元に居たマンションよりも何倍も広く、久志達専用の庭まである。
庭を付けてもらったところで盆栽の趣味はないし、ガーデニングの趣味もない。たまに来る庭師が好き勝手に弄り倒すくらいしか、特段、何もしていない。
だが、そこは本家側にある大きな池と繋がっている池があり、飼われている鯉が行き来するという風情豊かな庭だ。
本家の大改装に加えて作られた離れは、一からの施行になった。多忙な崎山に変わり、内装等を全て久志が担ったのだが我ながら良い間取りだと自負している。
勿論、ドアなどはなく微妙な間取りのバランスから壁や仕切りがドアの役割を果たしていて、ベッドで裸の雅が寝転がっていても大丈夫なように考えて設計された部屋だ。
部屋を初めて見たとき、雅はとても感動した顔を見せた。
飛び上がって素敵だとか何だとか、感情を爆発させるようなことはなくとも、輝く様な笑顔を見せてくれた。久志はそれが何よりも嬉しくて、雅をギュッと抱き締めた。
離れでの暮らしということは24時間365日、気の休まる事のない警護をすることと同じことだが、その笑顔が見れただけでそんなことはどうでも良くなった。
だが、今日、久志達の生業が如何に危険で死と隣り合わせなのかということを実感した。いや、今まで何度も実感したが、実際に雅がここまでダメージを受けたという記憶がないだけに、そのショックも大きかった。
雅自身もそのショックは大きいのか、お姫様の機嫌は止まる事を知らずに、悪くなる一方。雅にしては珍しく、粗野な歩き方をして思わず観葉植物に足をぶつけて、それに激怒している。
何だか、コントでも見ているようだ。
久志はふーっと息を吐いてジャケットを脱いで、シャツをスラックスから引き抜くと怒りで頭から湯気でも出そうな勢いの雅の元へ大股で歩み寄り、その軽い身体をひょいっと抱き上げた。
「うわ!!何する…!!」
肩に担がれ、荷物の様に運ばれる事で更に怒りを増した雅が久志の背中を叩くがお構い無し。
暴れようが叩かれようが、問題はない。だが雅はそれが気に入らななかったようだ。唐突に背中に激痛が走り、久志は思わず歩を止めた。
「…ってー!噛むか!?普通!?」
子供か!!!とじんじん痛む背中に、久志も腹が立ち目の横にある形の良い尻を叩いた。
「!!!!!」
声にならない怒りが、背中を何度も叩く手で分かる。それを放っておいて家の一番奥、日当りが一番良い場所に持ってきた寝室に入ると電気も付けずに大きなベッドに雅を放り投げた。
「いた!!!」
柔らかいスプリングとはいえ、さすがに投げられると痛かったのか、思いっきり睨みつけられたが久志は雅を上から押さえつけると強引に唇を奪った。
「んー!!!」
そんな気分じゃないとでも言いたいのか、ぎゅっと唇を引き締めて久志の口づけも断固拒否。久志はそれに唇を離して、上から雅を見下ろした。
「退けよ!!!」
「黙れ」
「…っ!!」
「ええ加減にせぇ。犯すぞ」
冷めた口調で言えば、雅が泣きそうな悔しそうな何とも言えない顔をして、ようやくそこで息を吐いた。
ベッドに押さえつけていた両手からも力が抜け、空気の抜けた風船の様に、突然萎んだくらい大人しくなった雅の額にそっとキスを落として、そのままギュッと抱き締めた。
「エエ子」
ポンポンと背中を撫でると、雅がおずおずと久志の広い背中に両手を回してぎゅっと抱きついてきた。
「だって、ムカつく」
「せやなぁ。でも俺も腹立ってるんやで。あそこで高杉が気ぃ付いて行ったからええようなもんを、誰も気付かんままやったらどないなってたか。想像するだけで寒気する」
あのまま、雅が拉致されていたら?殺られていたら?瀕死の重傷を負わされていたら?
全て有り得ない話ではないのだ。現に、雅ほどの腕を持ちながら、追いつめられ傷まで負っている。
自分が眞澄達にやられた時、雅は今の久志以上の想いをしたと思うと申し訳なさや情けなさが込み上げて来て堪らない。
「首、見して」
雅の顔を覗き込めば、先ほどまでの怒りはすっかり消えて、大人しい子猫のようになっていた。可愛いなんて口走れば、また毛を逆立てかねないのでニッコリ微笑むだけにする。
雅のジャケットを脱がして、窮屈そうなネクタイを外しシャツのボタンを三つほど外せば赤黒い痣がハッキリ見えた。
爪が喰い込んだのか、少し血が固まり傷になったところもある。
「痛い?」
「腹立つ」
「それは分かったから」
「あんな三文芝居にまんまと引っ掛かった」
「そうやなぁ」
「後ろの気配も全然気が付かなかったし…」
「うんうん」
「しかも、最終逃げられて…。ね、何してるの?」
雅の文句を聞きながら、三つほど外したシャツのボタンをついでにと全て外し、またついでにスラックスのベルトも緩めてボタンを外す。
インナーウェアーを捲り上げて白い肌を撫でながら、耳朶に緩く噛み付いたところでその言葉が出た。
「えーっと、しようかなって」
「…ね、馬鹿なの?」
あ、それいつも相川が言われてることだと思いながら、本気で言われると結構傷つく事を知る。そして、相川の打たれ強さを思い知る。
さすが、ボクサー。
「せやから、関西人に馬鹿って言わんといて。めっちゃ傷つく。愛がない」
スラックスのジッパーを下ろしても手を払われなかったので、久志はそのままスラックスの中に手を突っ込んで、それを脱がせながら触り心地の良い内太腿を撫で始めた。
「…ふ…ん」
吐息が一気に熱を帯びた。さわさわと撫でながら、するするとスラックスを足から抜く。序でに靴下とアンダーウエアを脱がして、一糸纏わぬ姿にすると喉が鳴った。
「…なぁ、水飲んできてええ?」
「…は?何、やっぱ馬鹿なの?ね、ムードぶち壊し」
「まぁまぁ。雅は?」
「いらない」
さすがに今、この状況で言うのが気に入らなかったのか雅はつっけんどんに言うと、羽毛布団に包まってしまった。それをフッと笑うと、久志はキッチンへ向かった。


ほかほかと温かくなってきた布団の下から、少しだけ冷たい大きな掌が雅の足を撫でてきた。
もうすっかりその気のなくなった雅は、その手を蹴飛ばして眠りにつこうと目を閉じる。だがその手はめげる事なく、また雅の足を撫でてきた。
もう勝手にすればいいと雅はその手を放置していると、何も身に付けていない尻を撫で始めた。
「ね、もうしない」
気の削げている時にそういう事をされるのは、正直、本当に鬱陶しい。雅は身体を丸めて、それを姿勢で訴えた。
いつもなら、無理強いをしない久志は今日はしつこい。それが余計に腹が立って、雅が非難の声を上げようとした瞬間、息が詰まった。
「…えっ」
ビクッと腰が撥ねて、その状況に付いて行けずに頭が混乱した。
一体、何が起こったのか。身体を起こしてそれを確認しようにも、指先までが震えてそれが出来ない。
「ひ、ひさ…」
小さな悲鳴で久志を呼ぶと、それに答えるかの様に内太腿に小さな痛みが走った。ちゅっと吸われる音がする。
だが、それがこの混乱を呼んでいる訳ではないのは明らかで、雅はゆっくりと中を覗いた。
「なに…」
暗闇の中、久志がごそごそと這い上がってきた。そして、ふぅ…っと息を吐いて冷たい空気を吸い込むと、雅の頬に口づけた。
「何、なの」
震える唇で不安を訴えると、久志はにっこり笑うだけで何も言わない。だが、おかしいのは明らかで…。
「何、入れたの」
「俺を不安にさせた罰」
久志はそう言うと雅の鎖骨に歯を立てた。そして形の良い尻タブを揉みながら、了解無しに中に入れたローターを更に奥へ押し込んだ。
「あ!!いや!!!」
「ちゃんとローション塗っとるし、痛ないやろー?」
「い、痛い!」
ガクガク震える指先で久志の腕を掴んで必死に訴えてみても、久志は聞く耳を持たずに腰をぶつけてきた。
「勃ってる…」
耳を擽る様に囁かれ、ぎゅっと目を閉じた。
久志が言う様に、雅のそこはすっかり反応していて、同じ様に裸になった久志の肉棒と口づける。少しずつ息づくそこをピッタリくっつけ、足を絡めて腰を揺すると雅は必死に頭を振った。
「いや…、中、いや」
そういう物を入れられた事がない、言うなれば、久志しか迎え入れた事のないそこに異物がある。小さな微弱な動きをしながら、生き物の様に動くそれに雅の目に涙が溜まった。
「あかんて」
”泣いても…”という久志の無情な言葉と共に、中のローターの動きが大きくなった。
「ああぁっ!!!あ…ぁ…あ…ぁ!あ、ぃ…や…ぁ、い…や…ぁ!!!い…やぁ!!」
雅が悲鳴を上げて腰を逃がす。が、指等でない、直接、中に入れられているローターは何をどうしても振動を続けて雅を襲うのだ。
「はぁ…!っ…!!ん…っ…、ひ…さし……!!あっ、あ…っ、あ……ぁああぁぁあ!!!」
長年、久志に愛されてきたそこは、どこもかしこも性感帯のようなもので、腸壁だというのを忘れるくらいに快感に襲われる。
身動きをする度に、当たる場所が変わり、雅を追い込んでくるのだ。
「ひ…っ!あっ…!!!!あ……あぁぁあ…ぁっ!あああ!!」
雅が一層、高い声を上げた。久志は布団を撥ね除けるとベッドで善がる雅を見ながら満足そうな笑みを浮かべた。
快感に襲われた雅は仰向けの状態で腰を高く上げていた。ペニスからは少量の蜜が飛び散り続け、味わった事のない快感に我を忘れているのだろう。久志でさえも、見た事がない姿だ。
「すげぇ…」
思わず息を呑む。えげつない色というに相応しい濃いピンクのコードが飲み込まれたそこは、忙しなく伸縮を繰り返す。
寝室になるそこの横には大きな窓があり、その窓の外には庭がある。その庭の灯籠から漏れる明かりが劣情に身を焦がした雅を淫靡に照らす。
食べても太らない体質の雅だが、ただ細いだけではない。時間を見つけては鍛えているため、筋肉が腰を引き締め身体のラインを綺麗に造り上げている。まるで芸術作品のそれのようだ。
久志は痙攣を起こす内太腿に舌を這わしながら、伸縮する蕾に指を沈ました。
「ひぃ…ん!!!」
その衝撃に、ぴゅっと蜜を吐き出すそれを眺めながら、更に奥へと指を進める。久志の指を咀嚼するそこに舌舐めずりしながら、ローターの振動の強さをまた上げた。
「ひっ!!!いやぁぁああ!!!!ひ、ひさ、し!!」
悲鳴を上げながら暴れる雅を押さえつけて、我慢が効かなくなった久志は育ちすぎた男根を手で支えると、そのまま蕾に捩じ込んだ。
「久志!!!」
雅が驚いて顔を上げた。無理もない、雅の中にはまだローターが入ったままなのだ。
久志は意地の悪い顔をして雅の頬を撫でると、ゆっくりと腰を進めた。
「いや、いや、いやだ…」
「お仕置き、って言ったやん?」
ガクガク震えて、涙をボロボロ零しながら不安に蛾眉を顰める雅の唇にちゅっと軽いキスを落とす。
久志の剛直を飲み込むそこは、雅の不安とは裏腹に煽動して止まらない。身体は追いついているが、気持ちが追いついてないというところだろうか?
この、初めての行為に。
「怖いん?」
顔を覗き込めば、いつもは射抜く様に人を見る強い双眸が不安に揺れていた。聞くまでもなく、というところだろう。
ぽろぽろと涙を流されると、何だか可哀相になってきてしまう。惚れた女の涙に男は弱いとは聞くが、結局、男だろうが女だろうが惚れた相手には全てにおいて弱くなるのだ。
「止めてやりたいけど…」
言って、細い喉元を覗いて、眉尻を下げる。
「これじゃあ、無理」
白い首に残る痣がどんどんどす黒い色に変色している。明日になれば、もっと酷い色になりそうで、久志はゆっくり上体を起こすと雅の片足を持ち上げると肩に掛けた。
「壊したら、ごめんな?」
久志は最後通牒とばかりにそう宣告すると、フッと笑って腰を穿った。
「あ…あ!あああ…ぁぁ!あぁぁあ……!ああぁー…!!!」
雅が悲鳴にも似た声を上げるが、久志はそれに構う事なく雅の中を己のそれで嬲る。
久志が奥へ入り込む度に、中のバイブが雅の更に奥へ入り込んできて、雅はシーツを掴んで泣き喚いた。
「いや!!!いや!!あああ…!!あ、奥、奥!!出ちゃ、出ちゃうから!!!」
頭を振りながら逃げようとする腰を掴んで、思いっきり腰を穿つと雅が息を詰めた。中の伸縮が激しくなり、久志を飲み込む力も大きくなった。
ぽとぽととシーツに垂れる白濁を見ながら、久志もその奥に叩き付ける様にして欲望を吐き出す。
そして、息つく間もなく雅の腰に腕を回すと、そのまま自分の腰の上に座らせた。
「ひぃ…っ!!!!ふか、深い!あああ!!ひさ、お願い、おねが、これ、イヤ、イヤ…」
騎乗位になったせいで、ローターが奥に当たって雅は弱々しく泣いた。久志はその涙を拭いながら、ゆっくりと下から腰を打ち付けた。
「ローター、先っぽに当たってヤバいわ」
「あ、ああ、…ん、いや、いや…、あああ、イク、また…イッちゃ!!や、もう、イキたく、な…、ひさ、」
久志に抱きついて、雅が背中を震わせる。いつ放ったのか、久志の腹は雅の放ったものでぐちゃぐちゃに汚れていた。
「あー、あかんなぁ、悪い子や」
久志はずるっとペニスを引き抜くと、ゆっくりとローターを引っ張り出した。ベッドの上で、ローターが振動して暴れていたが、久志がスイッチを止めるとそれは動かなくなった。
指一本も動かせないとばかりに、ぐったりとベッドに寝転がる雅を引き寄せて四つん這いの格好を取らせる。雅が小さな声で、もう、イヤと懇願したが、久志はそれを聞かずにゆっくりと雅の中に入り込んだ。
「ん、んー!!」
もう、何をされても放ってしまうほどに雅の身体は欲望に溺れていた。少し腰を穿たれただけで、ぼとぼとと蜜を零し啼いた。
「あ、ぁあ、…ひ、あ…ん」
「気持ちエエ?…俺も、ヤバい。なぁ、雅?今日は朝まで、付き合ってもらうからな」
その言葉に、雅は恍惚とした表情を浮かべたのを、久志は知らなかった。
そして、ゆっくりと長い夜を味わう様に、久志は腰を動かし始めた。