鼓動が早くなるとか、一緒にいると目も合わせられなくて言葉もうまく喋れない。相手の視線が気になって、横目で盗み見。そんな経験…。
「職質か?」
「初恋だよ!!!!」
高杉の言葉に相川は大声を上げた。
「なんで鼓動が早いとか、一緒に居ると目も合わせられないとか、緊張して喋れないとかが職質なの!?バカなの!?」
「いや、それ職質だよねー。後ろめたいじゃない、僕ら」
佐々木はふふっと笑って、焼き鳥を頬張る。
ここは鬼塚組御用達である小料理屋で、相川が訳あって買い上げ組に投げた店である。こじんまりとした店を年配のおかみと孫で仕切るのだが、今日は相川たちの他にも組の連中が来て居るのでバイトもちらほら。
「ってかさ、おかしくね?いや、ないでしょ、どうしてそんな枯れちゃってるの?職質ってなに?職業病か、お前らは」
「いや、俺も職質って思うたわ。なぁ、崎山」
相川の隣に座る久志が、その隣の雅に話を振った。
「そうだな。俺はお前と違って、職質受けたことないけどね。でもニュアンスは職質だったな」
「ちがー!!!あ、そうだ、初恋。なぁ、佐々木さん、初恋っていつ?」
「えー、僕みたいなおじさんはいいよ。遠い昔のことだから、忘れちゃった」
おじさんって、そこまでおじさんじゃないじゃないと相川は高杉を見たが、聞くだけ無駄だと久志を見た。
「お前はー、幼稚園の先生って感じじゃね?図星じゃね?俺、いいとこチョイスでしょ」
「はぁ?何、それ。幼稚園の記憶もあらへんわ」
「いや、お前みたいなのは絶対そう!!いや、俺って冴えてるー!!じゃねぇし!だから、そういうピュアな気持ち、君たち忘れてるから職質とか言うんじゃね!?」
「極道にピュアを求めるなんざ、お前の方がどうかしてるじゃねぇか」
高杉の冷めた笑いに、相川は頬を膨らませた。
「俺はいつでもピュアなんですー」
「ね、それってさ、純粋とか穢れがないっていう感じでしょ?子供とか若い子に使う。それをお前が言うのはさ、頭脳の成長も人間性の成長もないんですって言ってるのと同じだよね?」
雅の言葉に相川は言葉を失い、その場に居た全員が、崎山…と呟いたのは言うまでもない。
「ああいうのって、辛辣って言うんやろ」
部屋に帰った久志は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、雅に渡した。雅はそれを口にすると軽く口を濯いでシンクに吐き出した。蛇口を捻り水を流しながら、もう一度、ミネラルウォーターを口に含む。
酒は好きだが酒の後味が好きではないなと思う。
「俺なりの親切だよ」
バカにはバカって言っててやらないと。特に相川の場合は躾をしておいてやらないと、どうも落ち着きがなくていけない。
「俺、風呂」
雅は言って、スーツのジャケットを脱ぐと風呂場に向かった。
改築した新居の風呂は檜で出来ていて、以前のマンションの何倍もある広さと豪華さを兼ね備えている。浴槽は檜ではあるが、ジャグジーを付け男二人で浸かっても余裕のある大きさにした。天井に窓を埋め込み、月が綺麗な夜はお月見をしながらの入浴も可能。
日々、ストレス社会と戦っている雅に、少しでもリラックスをという配慮から久志が設計し造り上げた浴室だ。
雅はその浴槽に浸かると、ほぅ…っと息を吐いた。酒を飲んでの入浴は危険ですなんて聞くが、風呂に入らないと寝れない性分なので何が何でも入浴はしたい。
それに加えて、こんな立派な浴槽の快適さを知ると、尚のこと入りたくなるものだ。
「お邪魔!」
ガラッと格子が開いて久志が乱入してきた。雅は露骨に嫌な顔をして上がろうと腰を上げようとした。
「ほれ」
その雅の前に、シャーベット状にした氷に浸した飲み物が掲げられた。緑色のそれを受け取ると、ゆっくりと口をつける。
火照った身体に流れ込むそれは気持ちが良く、雅は一気に飲み干した。それを満足げに見ながら久志も同じものを口にした。
「緑茶だ」
「喉越しええやろー。飲んだ後って、口ん中が気持ち悪いしええかなーって」
久志は簡単にシャワーを浴びると、湯船にちゃぷんと浸かり雅の腕を引いた。
「いや、俺かなり浸かってて、あがりたいんだけど。逆上せる」
殺す気かと、さすがに飲酒して入浴して逆上せてはヤバイだろうと、久志から逃れようとした。だが久志は引く気がないようで、雅を浴槽の淵に座らすと壁に埋め込まれたパネルボタンを操作した。
すると少し涼しい風が身体を撫でた。
「浴室にエアコンとかって思ったけど、いるな」
久志は悪い顔を見せて崎山に近づくと、その開いた足の間に顔を近づけた。
「ね、ちょっと本気?」
「本気、そういう気分」
ちゅっと音を鳴らして少し強めに白い腿に吸い付くと、あっという間に淡い色の花が咲く。それに気を良くして同じように何度か吸い付くと、そこは花を咲かせたように彩られた。
「ね、遊んでる?」
いやいや、まさかと笑って舌を這わしながら足の付け根にまでいくと、ピクッと足が震えた。そういう、いつまでも処女みたいな初心な反応が堪らないと久志は双嚢に吸い付いて、もう片方をやわやわと揉みだした。
少しづつ雅の息が上がり、呼吸が浅くなってきているのがわかる。触ってもらえずに寂しそうに震える幹に舌を這わすと小さな悲鳴が上がった。
「弱いよなぁ、これ」
久志はフフッと笑ってまるで食らいつくようにして口に含むと、雅が声をあげた。
「ま、まって…あっ!」
じゅぶじゅぶと無遠慮に音を奏でながら吸い付くと、口に苦味を帯びた愛液が広がる。喉を窄めながら思いっきり吸い上げると、頭をぎゅっと抱きしめるようにして雅が背を曲げた。
「や、ぁ…っ!それ、や、だっ…!」
嫌だと言われると、余計にしたくなるのが男の性ってもんだろうと久志はやめることなく繰り返し、おまけにすっかり油断して無防備になっている窄まりに指を捩じ込んだ。
「ふ、あ!!!あああ!!!」
とぷっと多めに漏れたそれに応えるように、強く吸い付きながら身体の中からも快感の芽を刺激する。雅はそれが堪らないと、足をばたつかせたがそんなの御構い無しに少し強めに胸の果実を撫でた。
「ひっ…ん!!!!あ!ダメ、だめ!!あ、いっちゃ!!で、でちゃう!」
泣きそうな声で訴えながら、久志の頭を掻き抱き、だめと繰り返す声色は色がついているとすれば久志が先ほど腿に付けた花の色だろう。
喘ぎながら身体を震わせて限界を訴える雅の窄まりに、もう一本指を捩じ込んだ。そして舌先で先端を抉れば、声にならない声を上げて雅が一気に熱を吐き出した。
「ああ、!!あ、あん!あ…あ、はっ…」
びくびくと何度かに分けて吐き出すそれを吸い上げて、久志はようやく頭を離した。
「酔ってる割に、しっかり感じてくれとるな」
久志はニヤッと笑い、もう淵に座ってられない雅の身体を支えると、先ほど持ってきておいたお茶を飲んで口を濯いだ。
「も、ほんと、暑い」
確かに身体が火照ってるなと思い、お湯から雅の身体を抱き上げ出ると今度は久志が淵に座り、その身体を雅に跨がせた。
所謂、対面座位の格好。くたっくたの雅の身体をずらして、すっかり柔らかくなった窄まりに剛直の先端をくっつけると、雅がぐっと久志の肩を握った。
「ゆっくり、して」
返事はせずに少しづつ熱い中に入り込む。普段よりも断然熱い。すると雅がキスを強請るので口付けながら、更に奥へ奥へと進むとあまりの快感に互いに声を漏らした。
「やば、マジで堪らん」
少しだけ唇を離して言うと、目の周りを劣情で赤く染めた雅が下唇に吸い付いてくる。離れたところで互いに舌を出して絡め、ゆっくりと味わいながら深い口付けを交わす。
それに合わせるように腰を動かして雅の中を堪能し始めると、雅は久志の筋肉のついた腰になまめかしい足を廻して体内に深く久志を呼び込んだ。
「は!あ…あっ、あっ、そこ…、ああぁ…っ…!」
口付けを離してぎゅっと抱きついてくる雅の背中を支え、少し持ち上げながら腰をストロークすると中の煽動が大きくなった。
「気持ちええ?」
聞くまでもないが雅は熱に魘されたように何度も頷く。それに俺もと付け加えながら本格的に中を攻め出した。
雅の中は知り尽くしていると言っても過言ではない。どこに快感の芽があって、どこをどう抉られると気持ちが良いのか恐らく雅よりも熟知している。
久志は腰を回すようにして雅の弱いそれを撫で上げると、雁高を引っ掛けるようにして抽出を始めた。
「ひっ…!ぁ…、ああ…ぁ…!いや…、だめだめ…!ああ…!あ…あぁ…!!」
全身の毛を逆立てながら快感に震える雅は、少しづつ己の雄から蜜を吐き出し始めた。それを見た久志は意地悪そうな顔を見せて、雅の耳元に顔を近づけた。
「擦って、自分で」
「や、いや!いやっ…!」
「あかん、やれ」
雅は目に涙を溜めて久志を見るが、セックスの時に久志が意地悪になるのを知っている。ので、拒否しても絶対にやるまで許してくれないのも知っていた。
雅は緩やかに身体を揺さぶられながら、おずおずと自分の手で震える肉棒を握った。ぎゅっと握ると背骨から脳天まで一気に電気が流れるように快感が伝わり、雅は悲鳴をあげた。
「あ…あ…ぁ!や…、うっ…ん、あぁ、…あああ…っ…ぁっ…!」
「はぁ、あかん、しまる」
雅が扱けば連動するように中にいる久志を締め付ける。ぎゅっと締め付け、ずるずるっと動くそこは快感の坩堝だ。
淫猥な音を奏でながら後ろに久志を受け入れ、自分でペニスを扱くその情景が快感のスパイスになり雅は知らずに腰を動かしていた。雅のその蠱惑的な姿態に、久志は息を詰めた。
「あ…っ!で…ちゃ…、いっちゃ…ぁ…っ!あぁぁ…っ!すご…い!あぁぁ、久志…!!久志……!」
「あー、やばい、出る、俺も…」
「あ…あっ…あぁっ!い…っ…ちゃ…あっ!!」
雅が久志の腹に吐き出すのと同じ時に、久志も雅の中を欲望で汚した。何度も何度も吐き出しながら、力の抜けた雅の身体を抱きしめ息をつく。
ふぅっと呼吸を整えたところで雅に口付け、気怠そうな身体をペニスを抜かずに持ち上げると雅がギョッとした顔をした。
「え、ちょっと…」
「ちょっと黙って」
バスタブ近くにかけてあったタオルをタイルの床に敷いて、そこに雅を寝かせると足を抱えて久志はまた腰を動かし始めた。
「え、うぁ、や、いや、だ…やめ、あ、ひさし」
萎えたままの雅のペニスを緩やかに扱きながら、吐き出したことで少し萎えた自分の雄を雅の中で硬さを取り戻しながら縦横無尽に動かし始める。
あー、やっぱこうして動くのが一番、雅を堪能出来ると思いながら、強めに腰をぶつけると雅が本格的に暴れ始めた。
「いやっ!!あ!やぁ、あっ…あっ!あ…、ん…、うあ…っ!ああぁっ!」
「こうして、俺の、中に入れたままヤられるの堪らんやろ?」
中のシコリを先ほどとは比べものにならないくらいに乱暴に強く刺激する。それに雅が涙を流してやめてと繰り返した。
何だか悪いことしてるみたいなだなと思いつつも雅の雄も頭を擡げ始めたので、そこを刺激しながら赤く主張する胸の果実をぎゅっと指先で握ると、中にいる久志を思いっきり締め上げた。
「うわ!あー、やべ、出そうなった」
「あぁ…ぁ…っ…!!い…ああ…っ!!あぁ…あ!んんんー!!」
胸の果実と雅の雄の先端を同じように撫で回しながら、もっと奥に入りたいと腰を進める。ぐっと奥まで進めば、雅が息を詰めた。
「はっ…ああっ!!!」
「ここまで、ってあんまないもんな」
身体の力が全く入らない時でしか、雅の最奥には入れない。お互いが溶け合って一つになるくらいに交わりたくて、久志は奥だけを突くことにした。
「ひ、ぁ…っ!久志、あっ…!!それ、それだめ、なんか、なんかくる!きちゃ…!」
仰け反って久志の身体を拒もうとするが、身体に何の力も入ってない雅の抵抗なんてなんの意味も持たずに久志は少しだけ乱暴に奥を突き始めた。
「あー。気持ちええ」
中に入れた自分の種がじゅくじゅくと音を立てている。雅は怖いと泣いて嫌がっているが、その蜜壺はしっかりと久志を咥えて離さない。ぎゅっと締めて、逃がそうとはしない。
そして、その隙間から先ほど吐き出した久志の熱が、行き場を失くして溢れ出て来た。非生産的な行為だとしても、この身体を隅々まで味わえるのなら何の背徳感もない。
久志は快感だけを追う雅の雄の先端を擦りながら、自分もとスピードをあげた。
「あぁ…っ!だ…め、だあっ!あ、あぁっ!き…ちゃ…、だめ!でちゃ!!出…る…ぅ…っ!!!」
びくんっと雅の身体が跳ねたと思ったら、久志が先端を弄り回す雅のペニスから透明の液が吹き出てきた。びしゃびしゃと勢い良く出て久志の手や身体を汚す。それに久志は全身を震わせた。
「やー…!!見、ちゃやだ…ぁ…ぁっ!あぁ…あっ!んっ…!!やめて…っ!!あぁぁ…ああ……っ…っ…!!」
「う、あ、イクっ」
久志はその雅の姿に飲まれるように中に吐き出した。中で自分が汚されていることを感じた雅は、また震え、見ないでと繰り返しがなら、じょろじょろと漏らした。
潮吹きと初めての失禁に、何か大事なものを失くしたかのように落ち込む雅は身体を清めらている間も顔をあげることができなかった。
久志に好き勝手されて立てなくなったので、そのまま抱かれてベッドに運ばれたが、タオルケットに包まって芋虫状態。あんな可愛かったのにと思いながら、同じようにベッドに横たわった久志はタオルケットごと雅を抱きしめると濡れた髪にキスをした。
「なぁ、顔見せてくれな、まだやるで」
「ひ、久志!」
お前は!と言わんばかりに驚いた顔の雅が顔を出して、久志はにっこりと笑った。
「ごめんな、身体平気?」
聞けば頷いて久志の胸元にすり寄ってくる。何度も何度も抱いてはいるが、やはり久志にとって雅は宝物であそこまですることは皆無に近かった。
とはいっても潮吹きは何度かあるのだ。だが、それをしたあとの雅の落ち込みようがひどいので、久志としてはあまりしないほうがいいのかなと思っていたのだが。
「ちょっと、気持ちよぉて」
とことん犯したくなる、乱暴な気持ちになってしまう時が男にはあるもので、酒まで飲んでしまっていればそれが止まることなんてあるわけもなく。
調子に乗ったなーと猛省。
「さっきの相川の質問やけどさ」
「え?」
「初恋」
「ああ、何か言ってたね」
「俺、雅やから。初恋」
分かってるよな?とシミ一つない額に口づけると、ぎゅっと抱き締めた。
「初恋って実らへんって言うけど、俺ってラッキーな人間やわ」
雅はそれに何も言わず、返事とばかりに久志の広い背中に手を回した。