静電気とは、静止した電荷によって引き起こされる物理現象のこと。 Wikipediaより。バチッ!
「いてっ!」
小さいが、鋭い痛みに雨宮は顔を顰めた。相川が徐に触れてきたそこから放たれた痛みは、どこか覚えのあるそれで雨宮は痛んだ手を擦った。
我慢出来ないほどの痛みではないが、不快な痛みだ。
当の相川はというと、雨宮のその表情にニヤリと満足そうな笑みを浮かべていた。
「えへへー」
「なんすか…。あ、静電気?」
「準ピカチュウ」
「…あ、」
ほですか。と言葉を繋げずに飲み込む。
さすがに言っていいことと悪いことがあると思ったからだ。一応、兄貴分。敬意を払う。
でも、アホだと心から思う。
「かなり痛いんすけど」
「俺、たまに電気溜めちゃうんだよねぇー。貯金!」
ドヤ顔で親指を立ててくるが、それを言うなら蓄電と、やはり口には出さないで一人思う。
そもそも、蓄電と言ったところで分からないだろうと、かなり失礼なことを思っているからだ。
「俺は慣れっこだから、そんなに痛くない感じ?なんだけどさー。佐々木と橘にもやってやったもんねぇー!」
「そうすか」
でも、本当に痛いわと相川から少しだけ離れておいた。一度で十分、準ピカチュウ。
「次の生け贄は誰にすっかなー」
相川は手を擦り合せて更に静電気を溜めながら、次の獲物と鼻歌を歌いながら事務所を出て行った。
「あれ、結構痛いよねー。そのうち罰が当たらなければいいけどね」
佐々木が誰に言う訳でもなく言う。
罰か…。
思いながらソファに腰掛けると同時に、「いってぇ!!!」という怒声と壁に何かが叩きつけられる音がした。
心なし、ビルが揺れたような、それくらいの衝撃。
「雨宮さぁ、誰と来たの?」
佐々木が新聞を読みながら聞いてくるので、言うまでもないと笑みを見せると、佐々木もまた笑った。