花となれ

花series second1


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どれぐらい?もう何十時間もされてるような、いや、たった数分の様な。丁寧すぎる前戯に頭がついていかない。
時間の感覚が狂うほどに困惑し、初めて尽くしの行為に脳は早々にショートし機能していない。
薄っすら目を開けると、心の肩に乗せられた足が視界の端に入って目を瞑った。
「あ…ぅ…」
不快感はどこへ?ゆっくり拡げられていくそこは、そう聞きたくなるくらいに馴染んでいるように思えた。異物を受け入れることを…。
いや、馴染んではいない。違和感はある。
ずっと、中を好き勝手に弄り回されて痺れてる違和感。今まで、味わったことのない感覚。
「三本目」
「ふ…っんん!!!」
くちゅり、音が鳴る。年下でデリカシーのない男は、そう解説をつけて静の中に入る指を増やした。
ぴくんっと、心の肩に乗せられた足が跳ねる。ピローに縋り付く力もなくなり、息をするので精一杯。
じくじくと疼く孔が、心の指を咀嚼している。それはそれは美味しそうに。
さすがに自分の身体だから、それが分かる。喰っている。心の指を。
熱に魘されたみたいに、ふわふわする。後ろを散々貪られ、弄られ、ぐたぐたになっているのに心は許してくれない。
足を開かせ、たまに勃ち上がるペニスにキスまでしてくる。
「も…ゃ…ぁ」
じんじん疼く。孔が、中が。奥が。
それが何だか怖くて、残った力で心を蹴飛ばした。
「まだ蹴るか。ほな、こんなもんで」
ぐちゅっと盛大な音を奏でながら、異物がずるり出て行った。ああ、最悪と思った。
卑猥な音色が静を襲う。音が嫌。それ以上に、異物がなくなってひくつく孔が、嫌…。
「もぅ…死ね、…馬鹿」
とりあえず、文句を言う。
力なくベッドに横たわり、疼いてどうしようもない熱を冷ますべく目を閉じた。
「くくっ…死ねはないやろ」
確かにね。同感したが、でも、それほどにこっちの身になれとも思う。
他人の肌を知らない静からすれば、拷問なのだ。何もかもが。
あろうことかアナルに指まで入れられ、散々、弄ばれれば”死ね”と言いたくなって当然のこと。
「静…」
ぐいっと腕を引っ張られ、仰向けにされる。そのまま唇を奪われ、口腔に舌が入り込んだ。
それに何だかそうしたくて、自分の舌を絡めて吸ってみたら心の舌が驚いた様に引っ込んだ。
「…おい」
唸る様な声を出すが、こっちも男だ。受け身ばかりはつまらない。
ニヤッと笑うと驚いてしまった自分に腹が立ったのか、心は今度は噛み付く様なキスをしてきた。
負けずに入り込んで来る舌に、ぎこちないながらも必死に舌を絡めた。すると膝の裏に腕がかけられ、一気にぐいっと持ち上げられた。
「ちょ…っ!」
キスから逃れて心の顔を見る。その顔は飢えた野獣そのもので、雄の香りを漂わせながらニヤリと笑った。
「…力抜け」
「え、ちょっ!!ま、ぅあ!!…無理!!」
先ほどまで心が貪り倒した窄まりに、焼ける様な熱が口づけた。そのままグッと広がる孔に、痛みが走り悲鳴を上げた。
力を抜けと言われても、恐怖から力なんて抜けない。無理と譫言のように繰り返し、頭を振ると心が腰を止めた。
「腹に力入れて、力め」
「は、…っ??…な、に?」
「それが一番、力が抜けるって」
「…っざけんな、無理!!」
そんなもの突き入れようとしているくせに、力める訳がない!全身に力が入って、どうも出来ない状態なのに!!
「じゃあ、交代するか?」
「…へ?」
「俺で、童貞捨てたらええねん」
「…な、馬鹿じゃ…っ!!うわ!!」
それを想像して、フッと笑って力が抜けた瞬間を心が見逃す訳もなく、そのまま一気に腰を進めて静の中に押し入った。
そのあまりにも急な侵入に静は身体を丸めて、ぎゅっと心に抱きつき背中に爪を立てた。
「ひ、きょう者っ!…あ、あつ、…っ!…ああ!!や…ああぁ…!!い…った!!」
ぶわっと全身に汗が吹き出す。
痛いとかじゃない。そんな簡単じゃないし、そんな単純じゃない。
何てことしてんだ!!と言いたくても、声一つ上げられなかった。
ずずっとその灼熱は、ゆっくりながら静の中に入り込む。奥へ奥へと入ってくる心の熱に、静はホロっと涙を流した。
しがみ付いてくる静を抱き締め、その耳元で心が熱い吐息を漏らす。それに静の肌は粟立った。
「や…べぇ」
「…も…ゃ…だぁ…死、ね。おまえ…」
「っ…色気、なさすぎ」
ずるっと一番張り出した雁首が中に入り込むと、息をする隙が出来た。
はーっと一気に息を吐いて、心の身体から離れる。ぽたっと静の胸元に雫が降る。見ると、お互いの身体が汗に濡れていた。
「…なんてこと、してくれんの」
「まだ、入れただけ。…どんな感じ」
「…痛い。気持ち悪い、…本当に死ね」
違和感も不快感も、指とは比べ物にならないほどに半端ない圧迫感。熱いのがまた、何とも言えない。
じとっと心の顔を睨んで、額にへばりついた前髪を避けてやる。
「…心、なんか、めっちゃ子供の顔」
「ああ!?」
「うぁ…!揺らすなよっ!」
「好きに言え。俺は今から仕返しする」
いや、だから、そういうとこが子供。
しかし、すごいアングルだなと思う。心の肩に片足を乗っけて、身体を無防備に捧げてる状態。
恐る恐る、下を見てみる。うわー、繋がってるし。
「…で、どう?」
「え?」
「痛いか、どうかや」
「…痛いのは、ちょっとマシ」
「そうか、じゃあ、動く」
「え!!!」
ぐいっと肩に掛けていた足を引っ張られ、いきなり腰を打ち付けられた。
「あっ…ああああ!!!!」
奥底、深いところまでペニスを突き刺され、喉を反らした。
一番始めに吸い付かれた喉笛は真っ赤に染まっていて、心は再度そこに吸い付いた。
吸い付きながら、ピストンは激しくなる。無茶苦茶に身体を揺さぶられ、鎖骨の辺りに痛みが走った。
「うっ!…はっ、ああ…ぁ!!」
激しかったピストンがゆっくりとした律動に変わり、奥を突く。そうしながら、噛み付いた鎖骨を心がペロリと舐めた。
奥を突きながら、熱棒と変貌したペニスが中のシコリを擦る様に蠢く。そうされる度に目の前がチカチカして、ぎゅっとシーツを握り、白い波を作った。
腰を掴まれ、はぁはぁと荒い息を吐いて攻めて来る。その心に、ひどく興奮した。
「うっ…あ、あっ…!し、心…っ!」
呼べば、蜜を飛び散らすペニスをギュッと握られ、律動に合わせて扱かれる。
ガクガクと身体が震えて、ペニスを握るその腕を思わず掴んだ。
「や…ぁ、出…るっ!まっ…て…っ!、出…る…、ああ…っ、あぁ…あぁっ、…ああ…あ!、い…いく…、イ…ク…っ…!!イクっ!!」
味わったことのない快感に、息が詰まり身体が震えた。凄まじい悦楽に悲鳴が上がりそうになり、ぐっとそれを飲み込んだ。
とぷっと先端から蜜が溢れ出て、内腿が震える。快感に溺れ、全身から力が抜けぐったりとする。
なのに、心は腰を止めようとしなかった。それに静は慌てた。
「ひ…っ…!!ああ…、あ…あっ!いや…ぁ!!いや…、心…!!待…っ…て…、やめて…っ!」
「何、…おら、まだイケるやろっ」
少し萎えたペニスを、また扱かれて一気に涙が出る。
ぐっと奥歯を噛み締めた瞬間に、また静の熱は心の手を汚す。全身で呼吸をして、全身で快感に喘ぐ。
そうしながら、ぐちゃぐちゃと淫猥な音を奏でて心の手を汚した。
身体が震える。脳が溶ける。快感に溺れる。
「あぁ…ぁ!うぅっ!あ…ぁ…!や…ぁぁ、やだぁ…ぁっ、…あ…あぁ!怖…い!、心…っ!、しっ、ん……!あ…あっ!」
「怖ない…気持ち…ええって、ことや」
心は笑って、静のペニスから手を離す。勃ち上がり揺れるそれに満足して、舌舐めずりをしてみせた。
「…あ、う…んんっ!」
ぐんぐんと責められ、脳までがぐちゃぐちゃにされてるみたいな酷い快感。どこかへ飛んでいきそうなほどのそれは、静をどこまでも追いつめてくる。
じんじんと身体の中、奥が痺れて、それにどうしていいのか分からずに知らずに涙を零した。
「は…ぁ!…、あ…ああ!ぁっ…ああぁ…、あ!!心…っ!!」
揺さぶられるまま、声が漏れ止まらない。部屋中に響く自分のものとは思えぬ甘い声に、静は堪らずに心の名前を呼んだ。
「はぁ…」
それに応えるように、心が息を吐いた。白い歯の隙間から小さく舌を出し、静の全てを堪能しているような心の雄の表情に激しく欲情した。
色っぽさで視界から刺激され、受け入れる心を締め付けると、心が奥歯を噛み締めてそれに耐えた。
「すげぇ…な、本当に」
肌がぶつかるたびに、声が漏れる。その声を止められぬまま、ただ啼かされる。
中を汚され、犯され、静の知ることのなかった快感で追いつめてくるのだ。
緩やかな律動は段々と激しさを増し、静の中の固くなったシコリを心の血管の浮き出た雄で刺激してくる。
それに静は全身を震わし、淑女のように身体をくねらせた。
「いや…!、い…や…あっ!!あ…、そこ、だ…め…!!だめ…っ!!!ああ…!あぁぁぁ…っ…!あ、あ、あっ!」
あえかな声を出しながら、狂ったように善がる。快感に魘されるように乱れると、静の中で心が膨張した。
「ほら、…イけ。静…っ」
ぐちゅり、ベタベタのペニスをまた握られ、ぶわっと涙が溢れた。
先端を指の腹で擦られる。擦られながら、更に上下に擦られ身体が痙攣した。
「もっ、やぁ…っ…、やだ…ぁ、…しっ!、心…っ、ぃっやぁ!っ…!!イ…ク…っ…!!…あぁ……あっ…、は…あ…ぁっ…!!い…いや…ぁぁ…っ…!」
「…静っ!」
どくんっと中に広がる火傷しそうなほどの熱。心は何度か腰を振って、全てを出し切った。
そして少し遅れて静がとろっと熱を零す。ガクガクと無意識に震える身体は全身が過敏になっていて、心の指先が当たるだけでたまらなくなる。
「う…、はー、あ…。くそ…、この、ケダモノ…」
恨み言を言って、指一本動かすのがツライ手で涙を拭った。
「…ケダモノで、…結構」
ずるりと心が中から出て行く。その排泄感には、さすがに顔を顰めた。
「…べとべと」
「べとべとやな」
言うと、心は一息ついて、静の身体をひょいっと抱き上げた。
「ええ!!!…ちょ…ちょっ!!」
「ベトベトは、好かんやろ」
心はそう言うと部屋を出て、入って来たのとは別の格子戸を開けた。
入ってすぐに右手に大きな鏡が目に入り、とんでもない状況が映し出され心の頭を叩いた。
「いて!!」
「馬鹿!!下ろせよ!」
「頭どつかれたん、何年ぶりやねん。彪鷹以来やわ」
心は静の言葉を無視して更に中に入る。と、鼻を檜の香りが掠めた。
「檜…?」
「風呂」
見れば、長方形の大きな檜風呂が目に入った。風呂全体もかなりの広さだ。
その横の大きな窓からは坪庭が見えた。蹲踞と灯籠。子供ほどの大きさの仙見石の周りにはかもじ苔。
そしてその隣には立派な竹。
「うわ…」
すとんと黒御影石の床に下ろされ、その坪庭を眺めているとシャワーが頭から浴びせられた。
「ぎゃあ!」
浴びせられながら、べとべとの身体が段々さっぱりとしてくる。
ボディーソープで簡単に身体を洗われ、また、シャワーをかけられた。
俺は犬か!と文句を言おうかと思ったが、あの心が他人の世話焼いてるよ!と思うと可笑しくて好きにさせた。
ぼんやり、坪庭を眺める。幻想的で、心が落ち着く。これは、毎日が長風呂になりそうだと思った。