花の嵐

花series second2


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久々に来ると、いかに辺鄙で不便でどれだけ時代に取り残されている村かと思う。四方を山に囲まれ鬱蒼と茂る木々や雑草は外部からの侵入者を拒んでいるようだ。
整備されていない道は気を抜くと転倒しそうなほどに凹凸が激しい。年々それがひどくなっていっているような気がして、大型のバイクで来るのも限界かと思ってしまう。
スロットルを回しすぎないように気を付けながら、けもの道のような道を進んでいくと少し道が開ける。
だが闇は相変わらずで手入れのされていない木々と草のせいで暗さが増しているように思える。確か朝日を拝んで出発したのに、ここはもう暗黒の世界だ。
繁華街ほどの明るさがないにしても、暗すぎるそこに恐怖は感じずとも呆れはする。街頭もなければ何もない、頼るのは月の光とバイクのライトだけというのはどうなのか。
過疎化が進み、村が拓けることはまずなくなった。それでも残された村民が昔から村を守り伝統を引き継ぎ、廃村とならずに今もあるのは心からすればありがたいことだ。
心の生家は村の人間が管理をして、今も朽ちることなく現状を保ち残っている。滅多に帰ってくることはないが、いつでも住める状態ではある。
とはいえ帰るのは久方ぶりではあるので、ライフラインって通ったっけなと今更ながら少し不安になった。水は井戸があるので何とかなる。水があればあとはどうとでもなるかと考えていると、ようやく見慣れた家の屋根が見えてきた。
町と違い隣人は遥か遠くに住んでいて小さな灯りが見える程度。静かなところなのでバイクのエンジン音には気が付いているかもしれないが、特に問題はない。
心は家の前でバイクを停めると、ヘルメットを取って大きく伸びをした。
「いて」
傷が引き攣れ顔を歪めた。出血もないし膿んでもない。傷の治り具合や状態は悪態ついてもさすが塩谷だなと思う。腕だけはいい。腕だけ…。
しかしあんな無謀な襲撃をした後で、更に無謀な長旅だったなと思ったが屋敷に戻って相馬と対峙するよりは断然いい。
今は身体的疲労よりも精神的負担を軽減したい気分だ。
「腹減ったな」
来る途中で適当に買った食糧はリュックに入っている。酒がないのが残念だが、贅沢は言ってられないと心は門扉の前に立ち、違和感に歩を止めた。
耳を澄ませて、周りを警戒する。聞こえるのは風の音と虫の声だけ。車のマフラー音も電車の音もない、自然が生み出す音色だけが聞こえる。
だがどこか、何かおかしいと辺りを窺う。
ここを知っている者は居ない。いや、相馬と彪鷹は知っている。そして…神童も。
検問で引っかかると拙いと武器は全て雨宮に渡した。傷の状態を考えると素手は遠慮したいが、そんなことも言ってられない。
心は胸ほどの高さの門扉を開けて中に入ると、真っ暗な格子戸の前に立った。管理を頼んでいるので長らく人の気配がない家ではあるが、蜘蛛の巣が張り巡らされているとかそんなお化け屋敷のような事にはなっていない。
バイクの鍵と一緒にくっ付けていた鍵を手にすると、鍵穴にゆっくりと差し込んだ。鍵は締まっているが違和感は気のせいではない。
ここで暴れるのは遠慮したいなと思いながらゆっくりと鍵を回し、ソッと格子戸を開けた。カラカラと小さな音がどうしても鳴る。
だが中から誰かが飛び出してくることも襲いかかってくることもない。とりあえず中に忍足で踏み込むと、足下にヘルメットを置いて拳を握った。
奥から人の気配がする。心が格子を開けた音に気が付いたか、いや、バイクの音で気が付いたのかこちらへ向かってきている。
広くない家の間取りを考え、潜んでいる人間の数を感じとる。そして暗闇に慣れた目が人影を見つけ、迷うことなく手を伸ばし首を掴んで床に叩きつけようとしたが、すぐにその頭に腕を回しガードした。
衝撃が傷に響いたが、すぐに起き上がり三和土の電気を付けた。
「な…」
「やべ…殺されるかと思った」
心に押し倒される形でラフな格好の静が小さく笑った。どうしてここに静が居るのか訳が分からず目を丸くする。
「静…?なんでここに…」
状況が飲み込めずに奥に目をやると、静の手が心の頬を突いた。
「誰もいない。俺、1人だけ」
「1人?ここに?いつから?」
「珍しい。パニクってるじゃん」
「そりゃそうやろ…」
「俺ってわかったんだ」
静はゆっくりと手を伸ばし、心の頬を撫で唇を指で撫でた。その瞬間、心は思わず静の手を掴み、その唇を塞いだ。
首を掴んだ時に鼻を掠めた匂いと手が触れた肌の感触。それだけで心は静だとわかったのだ。
乱暴に塞がれた唇に応えるように、静も口を開けて心を迎え入れる。舌を絡めながら心の背中に手を回し必死にしがみ付いてくる。
そんな静の身体を骨が軋むほどに抱き締め、深く口付けた後、昂る気を落ち着かせるために静の胸元に頭を置いて深呼吸をした。
そして心は息を吐きながら頭を上げると、後ろで開きっぱなしになっていた格子戸を閉めると靴を脱いで静を抱き上げ、部屋の奥へ進んだ。
寝ていたのであろう布団に静を乱暴に下ろすと、触れるようなキスを繰り返しながら互いに服を剥いでいく。早くと急くようにして、ようやく裸になった二人はぎゅっと抱き合って肌を重ねて、そこでようやく笑った。
「必死じゃん」
「静もな」
身体が熱い。熱を帯びて発熱しているように興奮しているのが分かる。静は心の肩にキスを落とすと、首元に甘噛みをした。
「おい」
煽られているのかと思うような行動に抗議して、そっちがその気ならとサラサラと絹のように滑らかな静の肌を堪能しながら、すでに聳り立つ雄を互いに擦り合わせる。そして心の大きな手が互いの屹立を掴んで扱き始めると、静は甘い音色で鳴き始めた。
「あ、ちょっと、ま…うぁ…」
「静…」
首筋に鼻腔を埋めて静の香りを堪能する。強めに扱くと静が首元にしがみついて、耳元で甘い息を吐いた。
ぐっと抱き上げ対面座位の形になると、蜜で濡れた指で蕾をそっと撫でた。それに静が背を震わせたが構わずゆっくりと中に入り込んだ。
「あ…あ、心…」
ぎゅっと手に力が入っている。流石に違和感と痛みが勝るかと顔を覗き込んで唇を求めた。静はそれに気が付いてすぐに噛みつくように口付け、違和感を拭おうと少しだけ萎えた屹立を心の腹に擦り付けてきた。
それに合わせて中に入れた指を第2関節まで入れて、ゆっくりと中を拓くように撫でる。それを繰り返していると、力の抜けた静の身体に合わせて指の出入りがスムーズになった。
心はそれを感じて指を増やすと静を抱えたままゴロッと寝転がり、上に乗った静の中の胡桃を指の腹で擦り始めた。
「あ!!ちょ、待って!ああ、それダメ、そこダメ!あ、うぁ…」
「ダメやあらへんし」
ダメと言いながらも静の屹立は心の腹をどんどん濡らす。ぎゅっと抱き付きながら、ぶるぶると震えながら心の腹で自分を愛撫しているのだ。
すぐに中の快感を思い出し、静の身体は花が開くようにして心の指を奥へと迎え入れる。中の煽動も心の指を異物としてではなく、快感の坩堝へ誘う指として咀嚼を始めた。
「あ、心、ダメ…あっ…」
目尻に涙を溜めて訴える静の中から指を抜き、凶暴にさえ見える雄を静の秘部に当てると、下からゆっくりと挿入を始めた。
「あ、心…ぅあ…っ!」
心の上で仰け反りながら、身体を震えさす静の細い腰を掴んで心の屹立を迎え入れる中に、舌舐めずりをした。
内襞がぞわぞわと心を撫で、絡みつくように顫動を始める。一気に動き出したいのを耐え、小さく息を吐いてから中を突くようにして腰を回すと、静がブルっと身体を震わせた。
勃ち上がる屹立もそれに合わせるように震え、心はその切っ先を指の腹でツルッと撫でた。
「あ!!馬鹿っ!ああ、あ…」
ギュッと足の指を丸めて顔を覆う。少し達してしまったようで、心は満足気に笑った。
ツーっと、静の先っぽから流れ出る少し濃い色の快楽の涙を指先で拭い、まだ勃ち上がったままの屹立を撫でる。心の指の動きに静が息を荒くして、それに合わせるように中もぐにゅっと動いた。
「気持ちええ?」
聞くとギロっと睨まれたが、心が首を傾げると静が耐えるように唇を噛んで僅かに頷いた。
「俺も…」
言って、少し下から腰を回すと、静が深い息を吐いた。
「も…、お、きっぃ…」
「あほ…」
これ以上、煽るなと言いながら、思い切り突き上げるには久々の行為に静の身体が付いていけるとは思えない。かと言って、生殺しのように軽く奥だけ突くのも辛いところだ。
「痛いか?」
「痛くない、けど…ちょっと、待って」
呼吸を整えて静が両手を広げると、心が起き上がり身体を抱きしめた。
「こうしてて…」
ぎゅっと抱きしめると安心したように息を吐く。静は心の肩に顔を置いて、背中の筋肉を見ていた。脂肪が全くない背中は少し痩せたように思える。
目を首元に移すと、一直線に走る赤いラインが目に入った。少し離れて胸元を見ると、赤く腫れた傷が心の体を両断するように走っている。
「痛い?」
「もう痛くあらへん」
静は口元で笑ってぎゅっと心に抱きついた、温かい。どんどんと血が溢れてどんどんと冷え切っていくあの時よりも温かい。
生きてる…。静は掌で背中や腕をゆっくりと撫でて肌を堪能すると、首筋に口づけて小さく吸い付いた。
「おい」
「動いて…」
「ようやくお預け終わった」
心がニヤリと笑うとグッと静の腰を引き寄せた。
「はは…、すぐイキそうや」
心は静の身体を布団に転がすと片足を持ち上げ舌を這わしながら、少しづつ腰を動かし始めた。
「ちょ、心…!んっ…」
「こうやって、ぐちゃぐちゃになっていくん見るんは楽しいもんや」
筋肉のある脹脛に小さく噛み付いて、心が中を突く度に震える屹立を指で弾いた。それに心を咥え込む蜜壺がギュッと締まって心は舌舐めずりをした。
「し…心、これ、ちょっと…!あ!」
「腹が薄いから、壊れそうやな」
人の倍以上の食欲なのに身体は薄いまま。中から突き破ることも出来そうな下腹を掌で押すと、静の声が一段と大きくなって蜜が飛ぶようにして心の手を濡らした。
「な、に…?」
「あー、なるほど」
心はニヤリと笑ってみせたが、その顔は何か楽しいことを思いついたような悪い顔だった。
「中から前立腺突いて、上からも前立腺を押されてるんやな」
「どういう…こと?…あう!!」
「中も、外からも突かれまくるってこと」
中から凶器のような屹立で快楽の実を押し潰すようにして突かれ、外側からもそこに的確に当たるように押される。心が腰を付くたびに、頭がおかしくなりそうな快感に静は悲鳴を上げた。
「ひ…!だめ!だめ!これ…!!あぁ、あ!だ、あ!いく!出ちゃう!!やだ!あ、イクッ…!!」
「あー、持ってかれる…」
ぎゅーっと心を締め付けながら、静は蜜を飛ばし身体を大きく震わす。心はそれでもまだ腰を動かし、静を攻めた。
「し、しん!あ、ああああ!やっ!!し、心…止まって!とま、って!!」
ぐちゅぐちゅと淫猥な音色を奏でながら静は心を美味しそうに飲み込み離そうとしないし、心は脳が震えるほどの快感の中から出るつもりもなかった。
すっかりと萎えた静の雄ではあるが、中で何度も心を締め付けているのを感じると何度も絶頂しているようだ。それを証拠に小さく痙攣して僅かな蜜を吐いている。
静が放ったものが二人を繋ぐ場所を濡らし、淫猥な音色を奏でる。聴覚からも刺激される快感に静は身震いし、無理やりとも言える絶頂の波に何度も飲まれ愉悦に浸った。
「心、し…ん、あ、あー、もう…いやだ、あぁっ!あ…し、しん…」
何度も名前を呼んで、何度もキスして何度も中に居る熱を感じる。それが幸せで自然と涙が溢れた。
「泣くな、アホ」
「う、あ…あ、だって…あっ!は、ああっ!あぅ…ん、あ…っ!」
「あー、くそ、もう無理」
ここまで良く耐えたもんだと一人で感心して、静を押さえつけるように上から無遠慮に腰を穿つ。静の内襞は心の限界を知ったかのように、今まで以上に淫猥な動きをして心を絶頂に促す。
絶妙な刺激と締め付けに心は一際大きく腰を穿つと、静の最奥に熱い熱を吐き出した。

「屋敷みたいには大きくないけど、十分大きいね」
静はすっかり力の入らない身体を心の身体に凭れさせ、お湯を手で掬った。家の浴槽は大理石で出来ていて、心と2人で浸かっても窮屈さを感じさせない広さだった。
「風呂は入れ替えたからな」
「そうなんだ」
濡れた静の髪を触って、耳朶を食むと静が擽ったいと笑った。
「よぉ、ここがわかったな」
「雨宮さんだよ」
「雨宮?へぇ…」
及川姓のことも調べ上げた雨宮なら、生家を探すことも容易かっただろう。ここがまだこうして現状の形のまま残っていることには驚いたかもしれないが…。
「前に、場所を教えてくれてたんだ。何かあったらそこへ行けって言われてたんだけど、まさかこんな山奥とは。どうにか辿り着いたけど、さすがに鍵は持ってないから中に入れないし途方に暮れてたら村のお婆さんに会って、村長さんっていうのかな。若い人なんだけど、その人が来て初めは警戒されたんだけど心の事話したら、心の知り合いかーって」
「春日か」
「そうそう、何か大きな橘さんみたいな人。ここの家の管理もしてくれてるって」