本当に君は僕を困らせる

- J'ai un gros problème -

花series spin-off


- 4 -

「滋養強壮に効きますか?」
白く濁ったお湯を指で掬いながら、暁は月を見上げた。だが視力の弱い暁の瞳では、その朧げな月をはっきりと見る事が出来ずに残念に思った。
すっかり汚れた身体を清めるために風呂に行こうと思ったら、相馬に呼ばれて部屋に付いた庭へと連れて行かれた。どうしてそんなところへと思ったのだが、なんとそこには部屋に備え付けの露天風呂があったのだ。
大きな露天風呂は二人だけで楽しむには勿体ないくらいに広く、そして何の障害もなく月を見上げられる絶景付きだった。
ビルの影もネオンもない、車のクラクションもなければ人の声もしない、聞こえるのは虫の声と梟の鳴き声。
それに心から癒される。
「身体、大丈夫?」
暁の身体を後ろから抱き締めていた相馬が、頬にキスを落として聞いてきた。あれだけ無茶をされ慣れない日本酒まで飲まされたが、さすが男の身体というのは頑丈に出来ているものだ。
立ち上がるまでは苦労はしたが、それからは少し身体が軋む程度であとは何の痛みも違和感もなかった。
「意外に平気」
「そう、なら良かった」
今、相馬が後ろに居てくれて助かったと暁は思った。何だかスゴい事をたくさんしたような気がするし言った気もする。
素面になると羞恥心が込み上げてきて、何を話せばいいのか分からずに無意味にお湯をぱしゃぱしゃと跳ねさせた。
「あー、えーっと、そうだ。北斗、のお母さんとお父さんってどういう人?」
「え?父と母?」
何を話していいのか分からずに、思いついたことを口にしてみると相馬がうーんと唸った。
「えっと、厳しい?」
「いや、厳しくはないよ。多分、変わっている人達だよ。うん、二人とも基本的におっとりしている人だね」
「え?そうなの?あ、やっぱり弁護士?」
「そうだね、母は専業主婦だけど、父はね。あ、でも今は引退して、二人してスローライフってやつを楽しんでるよ」
「スローライフ?じゃあ、田舎に?」
「いや、庭に畑を作ってね」
「何か、意外」
暁は想像していた相馬の両親とあまりにかけ離れているので、少し驚いた。暁の想像はというと、ビシッとスーツを着て仕事一筋で生きる父親と、ホームパーティなんかをする華やかな装いの母親だったのだ。
「北斗の両親って、こう、TVで見る様な仕事人間みたいなお父さんと、社交ダンスとかしてそうなお母さんを想像してた」
「ああ、そういう感じの、よく言われるけど。でも母は典型的な専業主婦だよ。鈍臭いし」
「鈍臭い?」
「そう、学生の時とか昼は弁当なんだけどね。作ってくれるのはありがたいんだけど、弁当箱が2段式なんだけどよくやられたのがその組み合わせの間違い。父と同じ弁当箱を使うもんだから、上も下もご飯とかよくやられたよ。もちろん、もう一方は上も下もおかず」
「あははは!それ、ひどいっ!」
その弁当箱を開ける相馬を想像して、暁は思わず笑ってしまった。それに相馬も釣られて笑い、そしてどちらかともなく口づけをした。
「さっきの、お酒…」
「ああ、美味しかった?」
ちゅっと舌を吸われて、こくっと頷く。まだ飲む?と聞かれて、暁は再度頷いた。

「この旅館には酒蔵があって、そこで造ってる酒なんだよ。だから、他所では飲めないし売ってもないよ」
相馬が部屋から盆に載せて持ってきた徳利とお猪口は、先ほどの物とはまた違っていた。ガラスの徳利はヒビが入っているように見えた。だがそれは刻み込まれた模様で、月明かりに照らされてキラキラと輝いていてとても綺麗だ。
そしてそれと同じ様な模様のお猪口。何よりもその二つが桜色に染められていて、女の子が喜びそうな物だなと思った。
「綺麗なガラスだね」
「そうだね。酒に合ってるね」
相馬はお猪口に酒を注ぐと、それを暁に差し出した。
「ゆっくりね」
言われ、鼻を近付けてみると、やはり桜の香りが香る。気のせいじゃなかったんだと口を付けてみると、甘い酒が喉をすーっと通った。
「これ、飲み易い」
「日本酒すべてがこうはいかないけどね。辛口のもあるし、これよりも甘いのもあるしね」
「日本酒、好きなの?」
「そうだなぁ。どちからというと一番好きかもしれないかな」
これもまた意外な発見と暁はまた、酒に口を付けた。今日は発見がたくさんある。今の姿だってそうだ。
いつもは一糸乱れない髪型でしっかりスーツを着こなしているが、水に濡れた髪は無造作に掻きあげられていて、思わずドキッとしてしまう。普段とは全く違う姿にときめくという女の子の気持ちが、今はよく分かる。
「飲ませて」
相馬が後ろから耳元で囁く。暁はそれにゾクッと身体を震わせたが、酒を口に含むと後ろを振り返り相馬に口づけた。
開いた口の隙間から、ゆっくりと酒を流し込む。身体を反転させて相馬に股がると、また酒を含んで口づけた。
「やっぱり、他所では酒、禁止」
相馬はそう言うと、うっとりとした表情の暁の口に指を入れた。
「こんなにはしたなくなるんだから、他所で飲んじゃダメだよ?」
舌を撫でる様に指を抜き挿ししながら、歯列を撫でる。その相馬の指に美味しそうにむしゃぶりつきながら、暁は頭を擡げた雄に手を這わせた。
「自分でする?して見せてくれるの?」
あの酒には何か特別なものが入っているんじゃないだろうかと思うほど、行動が大胆になりエスカレートする。
暁は相馬の指に吸い付き、舌を絡めながらお湯の中で忙しなく手を動かした。
「う…あ…っ、は…っ、あぁ…ぁ、ああ…っ」
白く濁ったお湯で良かったと、少しだけ醒めた自分が思った。だがちゃぷちゃぷと暴れるお湯が、何をしているのかを表していて暁は顔を染めた。
「もっと、見せてよ」
相馬は暁の口から指を抜くと、そのまま暁の身体を持ち上げて風呂の縁に座らせた。
そして自分はお湯の中に戻ると、ゆったりと酒を飲み始めた。
「スゴいね、丸見えだ」
お湯で濡れた雄は卑猥で、暁は目を逸らせた。月明かりの下、しかも外で何て格好をしてるのかと思うと、居た堪れなさに襲われる。
だがそんな暁の気持ちとは裏腹に、握り締めた昂ぶりからは蜜が零れた。
「外だから興奮してる?あんまり声上げると、誰か来るかも?」
「あ、ダメ…」
ふるふると首を振りながら、ゆっくりと昂ぶりを擦り上げる。すると相馬がすーっと寄ってきて、その昂りに少し酒を垂らした。
「あ、つめた…」
扱く手にかけられた酒が、くちゅくちゅと卑猥な音色を奏でる音を更に大きくする。相馬はそこに顔を近付けると、その下にある双嚢をべろっと舐めた。
「わっ!あ、だめっ!」
「しーっ、ほら、続けて」
咎める様に言うと、また双嚢を舐めてくる。じゅっと吸われて口に含まれると、知らず知らず昂りを擦る手も早くなった。
「あああ…あ…ん…っ、う…ぁ、あ…、う…っ、ん…ん」
相馬が双嚢を舐める音と、暁が昂ぶりを擦る音。それが空に響いて、暁は頭を振った。
きゅんきゅんと後ろが疼いて、その切なさにゆっくりと足を縁に上げた。それに気が付いた相馬がふっと笑って、ひくひくと震える蕾にゆっくりと指を捩じ込んだ。
「ひぃ…っ!ん…んん…っ!」
捩じ込まれた瞬間、ぴっと暁が熱を吐き出した。だが相馬は止める事なく、その蕾を犯し始める。
ぐちゅぐちゅと耳を塞ぎたくなる音が響いたが、その壮絶な気持ち良さに暁は自分の昂ぶりを虐めた。後ろを相馬に犯されながら双嚢を銜えられ、必死に雄を扱く様は視覚で暁を昂みに押し上げる。
と、暁の一番弱いところ、中にある秘宝を相馬が指で強く擦りあげ、暁は電撃が走った様に身体を震わせ達した。
「ふ…っ、ん…ん…ふぅ…あぅ…んーーーー!!!」
ぎゅっと歯を食いしばり、声を殺す。そうしながら昂る雄から飛び散る欲望を巻き散らし、呆気なく果てた。
「すごいね、見てるだけでイキそうだ」
相馬は暁の汚れた身体をお湯で流して、震える身体に口づけを落とした。
「はぁ…あぁ…っ、はぁ…あ…あぁ…っ」
息が上がる。身体が震えて、またドロッと熱が漏れた。もしかして、どこかおかしくなったのかもしれない。
こんなこと、絶対にするはずないのに。もしかして本当にお酒に何か入っているのかもしれないと思ったが、暁以上に酒を飲む相馬は異常には見えない。
「俺、…変、」
「ん?そう?嬉しいよ、俺は」
相馬は暁を起こし上げると、縁に腰掛けた自分の上に座らせた。火照った身体をくっつけると、そのまま口づけを交わす。
今日だけで何回こうしてキスしただろう。ぼんやりとした頭で考えながら、暁は相馬の下唇をちゅっと吸った。
「俺、キス魔なのかも」
「え?いきなりだね」
「だって、ずっとこうして、北斗としときたい」
「それは、俺もだよ」
「ん…っ、ん…ぁっ」
口づけを交わしていると、相馬の長い指が暁の蕾を犯し始めた。もう何の抵抗もなくすんなり受け入れるそこは、指を呑み込んだだけで快感を得れる性器となっていた。
「まだ出来る?」
ぐーっと目一杯、指を中に突き立てて相馬が囁く。暁はそれに小さく頷いた。
「腰、ちょっと上げて?」
相馬の言う通りに腰を上げると、焼ける様に熱い熱が蕾に口づけた。暁の身体も風呂でだいぶと温まっているのに、それ以上に熱い熱に小さく声を漏らした。
「早く入りたいから、腰下ろして挿れてみて?」
「え?…このまま?」
「そう、大丈夫だから」
すっと腰を撫でられ、暁はゆっくり息を吐くと腰を下ろし始めた。
くちゅっと入り口が拡がるのが分かる。ずるっと熱が入り込んできて、暁は相馬の肩に顔を埋めた。
「おっき…ぃ」
はぁはぁと息を荒くしながら出っ張った雁高を呑み込んで、ずるずると残りの竿を喰らう。ようやく呑み込み終えた時には、暁は涙を零していた。
「は、ぁ…。あー、あつい…、これ…すごい…」
「あのね、そういうことを言うもんじゃないよ」
相馬は暁の頬に口づけて、その身体をぎゅっと抱き締めた。
「声、出しちゃダメだよ?」
ね?と言われ、暁は頷いた。それが合図のように、ゆっくりと相馬が律動し始める。緩やかな動きは、暁の再奥を突くことを繰り返した。
「あ…ぁ…、あっ、ああ…、は…ああっ……、はあ…ぁっ…ぁ…」
そういう場所ではないのに、相馬を受け入れたそこはじんわりと濡れ、ぐちゅぐちゅと音を立てる。その音のいやらしさに、暁は顔を左右に振った。
「すごい、音。気持ち、いい?」
「き、もち、いい…っ。もっと、奥っ、して…っ」
「奥、好き?すごいよ、ここ、突くと」
暁を上に載せたままぐるっと腰を回され、暁は悲鳴を上げそうになった。ぴゅっと暁の昂りが蜜を吐き出して、その快感に震える。
誰も触れたところのないそこに隙間なく相馬を受け入れ、あられもない姿で喘ぎ、それに悦んでいる自分が居る。
背徳感を感じるその行為だが、それ以上に愛されていると実感出来て、暁はひどく満たされた気分になった。
「北斗、ほく、と…好き、好き…好き」
熱に魘される様に言うと、相馬の昂りが中でより一層、膨らんだ。そう形を変える事で暁の一番弱いシコリを擦り潰してきて、暁は堪らず声を上げた。
「うぁっ!…あっ…あっ!ん…あっんん!」
「俺も、好きだよ、暁…」
「あ!ダメ、…だめっ!!」
下から激しく突かれ、暁は指先をきゅうっと曲げた。だがそれで耐えれる訳もなく、咄嗟に相馬の唇に噛み付く様なキスをした。
全身が小刻みに震え、相馬に合わせて自分でも腰を動かす。相馬の熱を中の秘宝に当てながら快感を貪り、相馬の腹を汚した。
「んんんっ…ん…あぁ…あ!ううぅ、あ…っ!う…ぅっ、う…っ!」
びくびく身体を跳ねさせて快感に耽っていると、ずるっと相馬が中から出て行った。その感覚でさえも快感になるのだから堪らない。
相馬は暁をお湯の中で立たせると、縁に手を付かせた。
「膝、ついたら傷になるから、しっかり耐えてね」
そう言うと、相馬は熱の冷めきらない昂ぶりを暁の中に沈ませた。ぐちゅちゅっと淫猥な音を立て、相馬が入り込んで来る。
体位の違うそれは今まで当たらなかった場所を擦りあげ、暁を驚かせた。
「ひッ…、北斗、ダメ、これ…まって」
「ダメだよ、暁の中、俺を喰って離さないもん」
ぱんっと腰を打ち付けられ、暁は慌てて口を押さえた。ぐりっとシコリを抉られ、壁を切っ先で擦られ最奥を突かれる。まさに獣の様に犯され、暁は喘いだ。
「や…ぁ…、い…やぁ…!いや…ぁ…あ…っあ…ぁぁ!!」
「すごいな、中、蠢いてる」
目の前がチカチカして恐る恐る下を見ると、自分でも気が付かないうちに達しているのが分かった。暁の昂りは、どろどろとした蜜を絶え間なく垂らし、震えていた。
そんな暁の乱れように、相馬が息を呑む。ぐりっと腰を回すだけで愉悦の声を漏らして、甘い蜜を垂らすのだ。
相馬はゆっくり腰を穿ちながら、綺麗な弧を描く背中に舌を這わせた。
「あ…ぁ…っ、す、ごいっ、すご…いっ、あぁ…!あ…北斗、北斗」
繋がったそこが捲れ上がって、熱を帯びているのが分かる。相馬が出ようとすれば絡み付いてそれを拒み、深く突き刺されるとヒダの1枚1枚が蠢いて、それに悦んでいた。
「あ…ぁ!、だ、めぇ…!え…、あ、なんか…あっ、なんか…き…ちゃ…、だめ、あっ!きっ…ちゃ!」
今まででとは全く違う感覚に、暁は驚いて逃げようとした。だが相馬がそれを許す訳もなく、それどころか更に激しく腰をぶつけてきた。
いつの間にか声を抑えるための手は口から離れ、崩れ落ちそうな身体を支えるために縁の石に必死にしがみついていた。
浅いところから一気に深いところまで雄を突き入れられ、腰を回しシコリを擦られる。脳天が痺れる様な感覚は絶え間なくやってきて、まるで打ち寄せる波のように激しさを増してきた。
どんどんと高くなるその波は相馬の動きに合わせて強くなり、暁は訳も分からず恐怖に震え泣いた。
「だめ…っ、だめ…っ…、や…ぁあ、やだ…っ!!!」
「ダメじゃないだろ、ほら、どうなるの?ほら…、んっ」
肌のぶつかる音と相馬を受け入れる音、そして相馬が時折漏らす声。全てが快感となり、暁に襲いかかった。
「あぁ…っ、でるっ!、でちゃ、ぁ…っ!…ぁぁ、イク…ッ!うぅ…うっ、ん…あぁ…っ、イクッ…!イクッ…」
どくんと、一瞬、鼓動が止まる様な、それぐらいの衝撃が暁を襲った。そして次の瞬間には血液が身体中を駆け巡り、逆流するほどの快感が走り、声にならない声を上げた。
それに合わせるように相馬がより一層、腰を強くぶつけ中に欲望を吐き出した瞬間、暁の昂りは白濁したものとは違うものをじょろじょろと漏らしたのだ。

「大丈夫?」
熱の引かない身体を綺麗な布団に横たえる暁に、相馬が心配そうな顔を見せたが暁は相馬の顔を直視出来ずに枕に顔を埋めた。
羞恥で死ねるとはまさにこのことだ!と思いながら、どうしてあんな事になったんだと、じんわり浮かぶ涙を拭った。
「ごめんね、ひどくしちゃって」
相馬が暁を後ろから抱き締め、髪にキスを落とした。暁は少しだけ枕から顔をあげて相馬を見ると、恐る恐る、相馬と向き合ってぎゅっと抱きついた。
「嫌いに、ならない?」
「え?どうして?なるわけないでしょう?」
「だって…」
「それだけ、良かったってことでしょう?嬉しかったし、すごく可愛かった」
ぎゅっと抱き締められ、暁はホッと息を吐いた。ホッとした瞬間に、急激な睡魔が暁を襲った。
暁はそれに歯向かう事なく、ゆっくりと目を閉じた。とくとくと、相馬の力強い鼓動を聞きながら。
「暁?寝た?」
ぎゅっと抱きついた暁の髪を撫でながら、そっと布団を被せ、相馬も目を閉じる。柔らかな髪を撫でながら、宝物を抱く様にして暁を抱き締め、相馬も暁の後を追うようにゆっくりと夢の中に堕ちていった。

翌朝、桜月の用意した遅めの朝餉を食べ、少しだけ散歩をして旅館を後にした。
「あっという間だったなー」
助手席から行きは見なかった景色を眺めながら名残惜しそうに言うと、相馬がふっと笑った。
「楽しい時間は、あっという間に過ぎてしまいますね」
「また、忙しい?」
「そうですね、私の主は、本当に使えない男ですから」
あ、いつものスイッチに切り替わってると思いながら、暁は少しだけつまらなそうに返事をした。
「次は、もう少し早く逢いにきますよ」
「そうしてください」
暁が少し強めにそう言うと、相馬は驚いた顔をしたが、次の瞬間には二人して笑った。
そして、帰りの道で色んな話をして、暁と相馬の短い旅行は幕を閉じた。