windfall

花series spin-off


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ゆるゆると、揺れている感じがする。身体が、頭が…?相川はその揺れに小さな声を上げた。
頭が重くて目も開けたくなくて、でも揺らされていることが気持ち悪いのに気持ちがいい。訳の分からない状態だが何だか違和感が拭えない。
「…っ、はぁ…」
漏れ聞こえた吐息は甘く熱を含んでいて、あ、そういう事かと理解した。
聴覚がいやに冴えて、その吐息を拾ってからどんどんと情報収集に動き出す。肌のぶつかる音、濡れた淫猥な音色。荒い呼吸、早い鼓動…。
「…あ、ぁ」
でも、何かおかしいような。相川は重い瞼を何とか押し上げてみたが、視界は薄暗くぼやけている。焦点が定まらないような、そんな感覚。
そうだ、昨日は成田達と飲みに行って…。
「ああっ…!!」
身体が跳ね上がって、相川は上体を押し上げた。そこで揺れが止まった。
「あ、起きました?おはようございます」
「え…と、巴?」
ようやく定まった視界が捉えたのは、京極 巴きょうごく ともえだった。巴は相川のいきつけの店の店員で、客商売の何たるかを全く理解していない無愛想なー男だった。
派手なツーブロックで、ムカつくほどに整った顔立ちをしている。眼光が鋭くニコリともしないのに、そのクールさがたまらないと巴目当ての女性客も多いらしいが、今はそんなことどうでもいい…。
「ちょっと、待って…やべぇ、何これ。え、ちょっと待って。え?これ…挿れてる?もしかして」
相川の今の姿は、黒いシャツを全開にして鍛え上げた上半身を露わにしている。そして何も纏っていない下半身は足を大きく広げている。
そう、下半身丸出しで足を広げている、紛れもない今の自分の姿で何度見ても見間違いではない。それどころか、その足の間に巴が入り込み、間違いなく相川の中に入り込んでいる。
「入ってますよ、がっつり」
「は!?いや、待って…あっ!!って!!待てって!!動くなってば!変な声出ちゃっただろ!!もう!!」
逃げたいのに動けないのは酒のせいか。強くもないのに成田に付き合って、加減なく呑んだのが運の尽き…。
「え、ちょっと、でも…痛くないけど、こんなもんなの?」
「酒のせいもあるし、散々、弄くり回させてもらいましたから。つうか、動いていい?キツい」
「や、やだよ!!ちょ!!あ、待、って…ああ!」
ガンガンと突き上げられ、声が止まらなくなる。身体の力も抜け、起き上がっているのも辛くベッドに身を預けた。
だが!こんな声、自分で聞いていて萎える!!と相川は口を押さえた。
「あれ?なんで押さえるんですか?俺、あんたの声、聞きたいのに」
「俺が嫌だよ!!ってか抜け!!ふほーしんにゅーだぞ!!」
「不法侵入って、ヤクザがそれ言う?」
巴は呆れたように言って、相川の足を抱え上げた。相川が咥え込んだ巴の切っ先が、中で最も敏感な場所を擦りあげ、相川は悲鳴をあげた。
「う…わっ、あ…あ、ああぁ!あ…!なに…!?」
驚いた相川は必死に巴から離れようと、身を捩った。
「前立腺、知らないわけないでしょ?相川さんが」
「知らねぇよ!!俺は攻める男なんだよ!ってか、抜いて、マジで…!!」
両手で顔を覆うようにして懇願する。情けないが身体は酒のせいで自由にならないし、異物感が酷いのに気持ちがいいという脳が完全にパニック。
今まで経験したことのない状況は、ただでさえ常にキャパシティーに余裕のない相川を追い詰めた。
「嫌ですよ、俺、イッてないし。相川さん、酔ってるからなかなかイかないし。つうか遅漏?」
「知らねぇよ!!ちげーよ!!つうか、イクわけないっしょ!?俺、ホモじゃねぇのに!つうか何これ!?嫌がらせ!?ちょっと、俺のこと誰か分かってるよね!?」
「誰って、仁流会鬼塚組の若頭付き舎弟でしょ。知ってますよ、それくらい」
「ってか、お前、ホモなの!?」
「さっきからホモホモ連呼して…せめて、ゲイって言ってくれます?それより、あんたうるさいから、ちょっと黙って」
言うなり、巴は思いっきり腰をぶつけた。最奥を容赦なく突かれ、相川は悲鳴を上げた。
「あッ…!奥!、奥…っ!や…ぁ…っだ……!!あ、ぁぁぁっ…あっ!う…ぅっ!あぁ…ぁ、あぁ……ああ!」
生まれて初めて味わう快感に思考が追いつかず、それでも抑えきれないあえかな声に指を噛んだ。すると、その手を巴がゆるりと握った。
「噛んだら、傷になりますよ」
「手、手が、ごつごつしてるー!!いやー!こんなん、ちがー!!」
わーわー喚く相川に舌打ちして相川の中から出て行くと、乱暴に身体を起こし後ろを向かせ膝を立てさせ、やはり断りなく男根を突き刺した。
十分に受け入れれる状態だったとはいえ、腰を下から突き上げられる衝撃に相川は上体を崩して尻を突きだすような格好で枕に顔を埋めた。
「あぁ、あ…………!あ!あ…ぁ、ぁ、うわ…っ、あ…ぁ……っ、や…、まっ…、て」
「十分、待ったし」
「あ……あ、あぁぁぁっ!マジ、で…ぇ…っ…、あ………ぁあっ、うっ…ぁぁ、あぁ!ぁ……っ…!!」
絶対に、変な薬盛られたと思うほどに身体が自分の意思とは正反対に快感に溺れていく。
男にこんなこと、絶対に有りえないことなのに、喘ぐ声は止められないし震える身体は止まらない。それどころか、慣れた目が捉えたのは聳り勃つ己のペニス。
ないわ、これ、絶対にない!しかも背後から犯されるという、まさに獣のそれに相川はシーツを握った。
「あー、すげぇ」
人の中を縦横無尽に犯しぬいての感想がそれか!と苛立ちながら、予想外の快感の渦に相川も目の奥をチカチカさせながら頭を振った。
「相川さん、いい?あ、良さそう」
巴は相川の勃ちあがったペニスを背後から擦り、刺激もされてないのに滴る蜜を指先で愉しんで項に噛み付いた。
「いった…って、もう、やめろって、マジで、洒落になんねぇ」
もう洒落にならないけど、でも、まだ引き返せるとか思っている時点で相川は馬鹿である。
巴はそんな相川に何度目かの溜息をついて、無理矢理、仰向けの体勢にひっくり返した。
「ひぃ…、っ…ん!!!」
「ん?あれ、ちょっと出ちゃった?」
「い、入れたままひっくり返すか!?」
鍛え上げられ彫り込まれた腹筋が痙攣している。そこに白濁したものが少しだけ垂れていて、巴はそれを指先で掬うとペロリと舐めた。
「ぎゃあ!!何してんの!!」
「濃いね。最近してないって本当だったんだ」
「そこじゃねぇし!つうか、何、今時の若者こえぇ!そんなん舐める!?」
「今時の若者が、誰でも彼でも精液舐めるわけないでしょ?本当に、馬鹿なんだから。大体、あんた、寝てる間に俺に身体中、舐めまわされてるけど?」
「…か、らだ、じゅう?」
相川が言葉通り目を点にすると、巴は口角を上げて笑って舌を出した。
「フェラもしたよ?」
「!!!!!!!!!」
今時の若者怖い!!と改めて顔色を青くした相川の両手を押さえつけ、巴は不敵な笑みを浮かべると、その唇に口付けた。
「んー!!!!」
もちろん、パニックである。
相川の頭には、巴のフェラもしたよという言葉が回っていて、言うなれば相川の口が相川をフェラしたみたいなそんな思考になってしまっている。
しかも先ほど、巴は相川の吐き出したものを舐めたのだ。それを思い出して暴れても、巴は嫌がる相川の口の中に舌を捩じ込み絡めて吸い付いて、そうしながら腰を穿つという遠慮も優しさもない行動に出た。
先ほどまでは相川の中を存分に味わって愉しみたい欲望のおかげで緩やかなセックスに終始していたが、そろそろ巴も限界に近い。
もう本気出していいよなと、相川のペニスに手を掛けた。
「はっ…!あ、え、ちょ、え、え、」
「相川さん、快感を与える側だったんでしょ。与えられるのって、味わいたいって思わないっすか?」
「は!?あ、ちょ、ああ!や、もう、お腹いっぱい…ってか、擦るなよ!」
「だって、まだ後ろだけでイケないでしょ、さすがに」
「な、…」
にを、恐ろしいこと言ってるんだ、この男!と相川が思うのが先か巴が動くのが先か、巴は相川の先端を指先で抉って腰を動かし出した。
それも今までとは違う激しいもので、同じ男だからこそ分かる、コイツ、イかせる気だ!と相川は息を止めた。
相川の、それまで誰も触ったことのない快感の卵を無遠慮に突き回し、腸壁を雁高で刺激する。全身が震える様な快感に、相川は悲鳴を上げた。
「い…や、い……や…ぁっ!だ…め、あ…っ、ああっ…あ!!!う…、ん…っ!あ…ぁ…、うわ…っ…!!!」
荒い吐息と出したこともない喘ぎ声。止まることのない快感。目の奥がチカチカとして、歯を食いしばる。
だが巴はそんな相川のペニスの先端をゆるゆると撫で回しながら、的確な愛撫で快感を引きずりだそうとしていて、相川は早々に降参をした。
早い話が、ここで止められたほうが地獄!と思ったからだ。
巴の愛撫に全身を委ね、動きやすい様に腰を上げる。それに気がついた巴は満足げに笑うと、相川に口付け、舌を滑り込ませた。
相川もそれを受け入れ、本気で舌を絡める。身体を揺さぶられるのには抵抗が残るが、委ねてみると引くくらいに気持ちが良かった。
「あぁっ!、そこ、そ…こっ、あぁ…、あ!あ………ぁぁ、あっ!!」
「ここ?はー、気持ち良い」
最奥を突かれ、抜かれる瞬間に肌が粟立つ。内太腿が痙攣して、何故か涙がボロボロと零れた。相川は巴の手に手を重ね、自分の震え濡れるペニスを一緒に扱いた。
「いく…、い…く…っ…!!そ…こっ、そこ、突いて、突いて…!ああ…あ!ヤバ…!ん…、あ…っあぁぁ!イク……っ!、イ…ク…っ…!」
目の前が真っ白になった瞬間、身体中の血液が持っていかれる様な、そんな錯覚に陥った。
相川のペニスからは止め処なく快感の蜜が溢れ、呼吸をする度に硬いままのそれが脈を打つ。
まるで全身が心臓になったかのようにガクガク震え、相川は吐息とともに子猫のような声を上げた。
「相川、さん…っ」
巴が甘い吐息と共に名前を呼び、力の抜けた相川の唇を奪って、その体内に燃える様に熱い熱を吐き出した。
「…え、え、え?えええええええええ!!!!!な、中出しした!?」
巴は最後、小さく腰を振ると、大きく息を吐いて相川を睨みつけた。
「相川さん、デリカシーないって言われません?」
「いやいやいや!!デリカシーないのって、巴だよね!?ってか、ないでしょ!?中出しとか、犯罪よ、マジで。いや、巴が俺にしたことが犯罪だけど!!いや、ちょっと!!うわっ!!」
わたわたと暴れ出す相川を押さえつけ、ずるっとペニスを抜くとベッドの下に置いてあったペットボトルを手にした。
「風呂、入りましょうよ」
ペットボトルを開けてそれを飲む巴に、犯された女子高生の様に布団を慌てて被る相川は目を見開いた。
「なんで風呂!?」
「あんた、後処理の仕方知ってる?」
「あ、と、処理?」
相川が首を傾げると、巴はペットボトルをベットに放って相川の腕を引っ張った。だが、もう足にも身体にも力が入らない相川は、そのままベッドから転げ落ちかけたが、それを巴が王子様よろしく抱きとめ、そのまま抱き上げた。
「待って!!!お姫様にタマがあるとか!!ないだろ、これ!超絶無理!受け入れられねぇ!!」
「うるせぇなぁ。じゃあ、マッパでお姫様抱き上げる俺は犯罪者ですか、コノヤロー」
巴は暴れる相川をとりあえず落ちない様に抱きとめ、バスルームに向かうと浴室の電気を点けた。

「もうね、俺、死んでも良い」
「ヤクザがそれ言うと、洒落になんないっすよ」
バスタブに浸かり、相川は目の周りを真っ赤に染め、今にもそのまま頭のてっぺんまでお湯に浸かりそうなほど憔悴しきっていた。
後処理は地獄だった。喚こうが抵抗しようが、腹を下すという理由で痺れの残るそこに指を入れられ掻き回された。
酒が残っていて、抵抗虚しくやられるがまま。終わる頃には身も心もボロボロになって、湯船に放り込まれた。そして身体を流した巴が入ってきて、湯船はいっぱいいっぱいだと悲鳴をあげることはなかった。
どうしてだか、この家の風呂が異様に広かったからである。だが、やはり男二人は窮屈感を感じた。
「お前、訴えてやるからな」
「相川さんも楽しんでたでしょ」
ぐいっと腰に腕が周り、そのまま浮力を使って引き寄せられる。暴れたところでどうにもならず、相川は巴の胸に収まった。
「何これ、いや、おかしい。つうか、あれはね!早く終われって思ったの!楽しんだとか、そんなわけないじゃん!つうか、何なのお前!マジでどうしたの!?これって嫌がらせ!?はっ!崎山か!」
「はぁ?崎山さん??何言ってんの?」
鬼塚組の人間は巴の店を借り切って宴会をすることもあるので、巴は相川以外の組の連中とも顔見知りである。
なので、相川は崎山の相川に対する盛大な嫌がらせだと思って怯えを見せた。
「マジで意味わかんねー。何これ、マジ意味不…」
「簡単でしょ、俺、好きなんです」
「え?セックス?」
「やっぱ馬鹿でしょ。あーあ、本当に俺、趣味悪いわ、自分で言うのもなんだけど」
「は?趣味悪いって、何!?」
「俺、相川さんが好きなんです」
「………はぁ????」
相川は振り返り、信じられないようなものを見るような目で巴を見たが、巴は至って真剣そのもの。
マジかよ…と相川は呟いて頭を垂れた。