windfall

花series spin-off


- 7 -

「ふ…下手くそ」
巴が笑うと相川がムッとした顔を見せた。
「お初だぞ、仕方ないだろ」
「ですね、その辿々しさがいい」
「なんか、マニアックだね」
だからこんな硬いのねと、慣れてしまえば抵抗もなくペロッと舐めた。張り出した雁首に歯を立ててみると、浮き出した血管が脈打ったのが分かった。
「そういえば、この部屋、変な部屋」
「変?ああ、本当はスタジオだから」
「スタジオ?」
「ダンスとかのね。祖父が唯一、祖母に残した遺産。ゆくゆくは家賃収入で食えるでしょ。まぁ、今はその予定もないから台所と風呂を無理やり入れ込んでるんだけど。知り合いの業者にあまりの家財で作ってもらったら無駄にでかい風呂が出来たけど」
その部屋で孫のナニを咥えてるって、なかなかの罪悪感なんですけどね。相川は「へー」なんて言って先端に吸い付いた。
そして、ぐっと咥えて上顎に当てながら顔を上下させる。手で刺激も加えると成長を増したので、気を良くして更に飲み込むようにして舌を絡めると苦味を帯びた味が口の中に広がった。
このまま喉までいけるかなと思ったが、長さからそれは無謀と口を離した。
「口が、顎が疲れた…。お前、でかい」
相川がゴロンと転がると、巴はその唇に吸い付いた。
「え、お前の舐めたんだけど」
「あ、忘れてた」
「じゃあ、お返しに俺がしますよ、フェラ。前は覚えてないでしょ」
「お持ち帰り強姦」
「ぶっ飛ばすぞ」
本当、調子狂うわと巴は呆れたように相川のうるさい口に口付けて、首筋を小さく吸う。今でもトレーニングを重ねているのか、身体は絞ってるんだなと手で撫でて思った。
「太らない体質ですか?それとも絞ってる?」
「太ると調子悪くなるんだよね、この体重がベスト…うわ、」
徐に咥えられて腰が跳ねた。そんないきなりパクッとされたことないんですけどと、思わず巴の肩を押した。
だが巴はそれに抗うように喉奥まで飲み込んで吸い付く。男の方が口が大きいから良いとかっていうのはこれかと、ダイレクトにくる快感に息を詰めた。
百戦錬磨のそれを生業としている女の子にしてもらった時よりも凄い。語彙が乏しい分、そんな感想しか浮かばないが、口の中に何か特別なもんも仕込んでますか?というくらいのテクで相川はみっともないくらい喘いでいた。
男の方がどこが気持ち良いのかも心得てるし、口が大きい分気持ちがいいらしいよとは聞いていたが、それで挑戦するほど馬鹿ではない。
そもそも男にそういうことをさせること自体が、天文学的数値並みににあり得ないと思っていたのに…。
「う、ああ、なに、あ、腰、腰…」
しゃぶりつく巴の髪を緩く掴むと、ジュッと吸いつきながら口を放されて腰が浮く。つーっと銀の色が蜘蛛の糸のように繋がっていて、相川は唇を噛んだ。
「何、腰、痛いんすか」
「腰、溶ける…」
「溶けろよ」
言って、巴の愛撫でパンパンに腫れたペニスをレロっと舐めて、裏筋にやんわり噛み付いた。それだけでトロトロと蜜を垂らして、相川は腹筋に力を入れてギュッと目を瞑った。
「何で、目ぇ閉じるんすか」
「イクの、もったいない…」
「はは、可愛ぃー」
指先で先端を弄って、そのまま指を下にずらす。それだけで相川は次の行動を想像して、小さな声を漏らした。
だが巴は指をそのまま内腿に持っていき、スルッと撫でるだけ。相川は憂いを帯びた目で巴を睨み付けると、巴は笑って相川に口付けた。
舌を絡ませると苦味を感じたが、それすら気にならないくらい快感に溺れ腰を揺らす。それに応えるように、巴は相川の濡れて、まるで女のそこのようにひくつく蕾の襞を撫で誘われるまま指を捩じ込んだ。
「ん!!ぁあ!」
散々焦らしていたせいか、相川がそれだけで小さく達した。支えられないと身体を倒して、自分でぐちゃぐちゃに濡れたペニスを扱き出した。
「巴、早く、早く…」
「あんたなぁ…」
巴も興奮気味に息を荒くして赤く色づく乳首に吸い付きながら、相川の中にもう一本、指を入れた。
「あ、いっちゃう、いっちゃうから、早く、ともえ、って」
トロトロと蜜を垂らしているので、達してはいるが決定的な何かが足らないというところか。巴は我慢の限界と指を引き抜くと、腹に付きそうなくらいに勃ち上がるペニスにゴムをつけた。
「ほら、足」
両足を広げさせて足を持たせる。恥じらいも何もない、性に奔放すぎて心配になるレベルだなと巴は間に身体を入れると、先ほどまで指でいじり倒していた秘孔にペニスを口付けた。
「ほら、入れるから。息」
と言うまでもなく、身体の力抜けてるなと押し進めば、突っかかりもないままズルッとペニスは入り込んでいく。
指とは比べ物にならない熱さと太さ、入り込んでくるときの恐怖にも似たそれに相川は巴の首に腕を回して、それを拭い去るように乱暴に口付けると舌を絡めた。
ず…っと入り込んできた巴を一気に奥まで迎え入れるように腰に足を絡めると、巴も応えるように腰を進めて最奥に口付けた。そこでようやく口づけをやめて、相川は息を吐いた。
「入り込む瞬間が、まだ慣れねぇ…」
「慣れなくていいですよ、くっ付いてきて可愛いから」
「俺を可愛いとか言うの、巴だけなんだけど。超ウケる」
腹の奥に感じる熱と重み。これは嫌いじゃないなと思う。尻に当たる陰嚢も抵抗は初めだけで、あとは気にもならなくなった。
「今日、すごいね」
「そう…あー、そうかも。めっちゃお前のこと中で感じる。超気持ちいい」
「あんまり煽らないでくれます?」
「煽ってるつもりはないけど、中にエイリアン飼ってるみたいな、こう動きが…」
「萎えること言うなよ。動くよ」
言った途端、腰を打ちつけられるような抽挿に快感を無理やり引き摺り出されるようで、巴の腕に爪を立てた。熱を感じる入口の痺れとか、奥に当たるたびに脳にダイレクトに感じる快感とか、今日は何か違うと巴の胸に手を当てた。
「待って!待て待て待て!!」
「何、痛いの?」
「違う、待って、何か今日はやめる…!」
巴が動きを止めても、相川の中の煽動は早くと促すように相川の意志に反して暴れるようにキツく収縮を繰り返す。もっと奥壁を突けとばかりに飲み込もうとして、拓いているのだ。
相川が荒い息を吐いて顔を紅潮させているのを見て、巴は舌舐めずりをした。
「もしかして、漏れそう?」
「え!?これ、そうなの!?」
何か、気持ちの悪さというか緩さというか、とにかく何だかおかしいのだ。巴は相川の頬にキスをすると、両手の手と手を絡めて見たこともない笑顔を向けた。
「相川さんの中、すごい拓いてる。これなら…」
これなら何?と聞くことも出来ないまま、巴が腰を進めた。相川の中が促すまま、奥へ進み奥壁と思っていたそれよりもまだ中へ進もうとして、相川が悲鳴を上げた。
「あ…!ああっあぁ…っ!あ!!ま…って、とも…、え…っ!」
「あー、すご…」
「待って!待って!止まって!変、変だから!」
「変じゃないって、ほら、気持ち良い…」
「ま、きちゃ、なんかくる、くるってば!あ、あ、あー!!ああああぁぁああ!」
ガクガクと痙攣を起こす身体を押し付けて巴も良すぎる中を堪能するように腰をぶつけた。その度に相川のペニスから蜜がこぼれ、相川が喉を晒して震える。
中だけで絶頂する凄まじさを脳が受け入れきれておらず、快感の坩堝に陥った相川は全身が性感帯のように震えた。
「んんっ!っ…、う…う、ん…っっ…、うぁ…ぅ、っ!……!」
両手を押さえられてるせいで巴を止めることも出来ず、だが奥壁を突いたそこよりも先に巴の陰茎が入り込んだ瞬間、相川の腰が派手に跳ね上がった。
キューッと巴の陰茎の先端を絞るように吸い付いて巴も息を詰める。相川は涎が垂れたことも気がつかないまま、全身を震わせてペニスからはトロトロと蜜を垂れ流していた。
「はぁ…やば、気持ちいい」
巴が抽挿するたびに強烈な快感に星が飛ぶ。頭がバカになるほどの快感だが、全身の力が抜けてやられるがまま。強烈な絶頂が何度も何度も相川を襲い、触れてもないペニスからは流れるように蜜が出て止まらない。
「ああ…!、ううっ!っ…、…んん…っ!、ん…んぁ…っ…」
いつの間にか手は離されていて、両足を抱えられて奥へ入り込みやすいようにして身体を揺さぶられる。揺さぶられるたびに快感の激流に飲まれて意識を手放しそうな絶頂が相川を襲う。
「と…もえ…っ、あぁ!も…、うっ、いや…ぁ…っ」
「うん、俺も…イキそう…」
乱暴に、自分の快感を追うようにして相川を攻める巴の雄の顔に、また達した。接合部は相川の垂れ流したものとかで、ぐちゃぐちゃといつも以上に音を立てている。
その音にさえ興奮して絶頂に繋がり、絶対にバカになったとほんの僅かな理性が相川を心配する。だがすぐに快感に飲まれて身体を震えさせて中の巴を悦びから絞めつけるのだ。
「相川さん…っ!」
ぎゅっと抱きしめられ、相川の中で巴がグッと膨張したのが分かった。ぐんと跳ね上がった陰茎に相川も震え、お互いが貪るようなキスをした。
舌を絡ませて吸い付いて、舌も抽挿されて、相川はまた達したのだ。

「セックス、当分したくない」
「は!?なんで」
散々、喘がされて、達しても達しても許してもらえずにあれからまた中に入り込まれた。気を失うような絶頂は最後は苦痛になり、泣いてやめてと言うと巴も流石にこれ以上は可哀想かと解放してくれたのだ。
「あんなんされたら身が保たない。多分、死ぬ。確実に」
「いいんですよ、それで」
「なんで!?俺に死んで欲しいわけ?未亡人よ、巴!」
結婚してくれるんだと思わず笑いそうになるが、バカな相川は自分が言った言葉の意味を分かっていなさそうだと、やはり笑いそうになった。
「俺が散々、抱き潰して相川さんが女抱けなくなりゃ、それでいいもの」
「あのね、下衆ですけど、確かに下衆だけど、浮気はしないよ、俺。したことない」
「食事は浮気に入るっていう女もいるよね」
チラッと巴が横目で見ると、相川は眉尻を下げて困った顔を見せた。
「そうね、何度それで殴られたか。巴もそうなら断るよ、出来るだけ。だからまぁ、巴だけだね、もう」
「…さらっと、すげぇ告白してくるね、マジで」
「そう?」
「でも、俺的には男を知ると怖いなって」
巴は寝転がる相川の身体を引き寄せた。また抱きたくなるなと思いながら、肩口にキスを落として啄むようなキスもした。
「男を知るとってなに?俺、さすがに巴以外は無理だけど」
「受ける意味ではでしょ。相川さんって貞操観念緩いから、タチも出来そうだし」
「たち、とは…」
「男側ね、俺はネコ出来ないけど」
「いや、俺が男を抱くわけ!?無理でしょ、それは!」
確かに、相川のそれは想像は出来ないが、いや、そもそもこうなることだって想定外で人がどう転ぶかなんて誰にも分からないのだ。人生は驚きの連続とはよく言ったものだ。
「だって鬼塚組にはさ、崎山さんがいるじゃん」
「……は?」
「あんな美人、なかなかいないでしょ。同期だって言うし、何かのきっかけでさ…」
「巴!」
勢いよく起きがあり、巴の両肩を強い力で掴んだ必死の形相の相川に、巴は驚いた。何か良からぬ事を言ったかと思ったが、相川の顔はどことなく恐怖のそれに見えた。
「どうしたの?」
「美人って言った!?あの絶対暴君を、美人って!!」
え、なにこれ地雷なの?いや、そもそも何がどう地雷なの?
「見て!これ!!」
口の端の痣を必死の形相で訴えるその顔は危機迫るものがある。何事かと思うほどだ。もしかして崎山を巡り、組の中で壮絶な何かが起こっているとか…?
「み、見たよ、相川さんでももらうことあるんだね」
「お前が街中で暴れるから、及川が出しゃばってきたじゃねぇか!!で見事なまでの右ストレートよ。同期の顔を躊躇いなくフルスイングパンチよ。良い腰だったわ。あいつ、絶対に世界王者になれる」
「及川って誰。え?それ、まさか崎山さんにやられたの?」
「崎山だよ、暴君崎山!いいか、絶対にあいつに付き合ってること言うなよ!!巴と付き合ってることがバレたら、俺、埋められるから!富士山の樹海に捨てられるから!腕の一本くらい折られるから!」
崎山は相川とともにふさへ通う組員だ。相川と初めて会ったときにもやって来て、所作の綺麗な男だと思ったのを覚えている。眉目秀麗そのままで、こんな男が極道なのか?と訝しむほどに似合わない。
にっこりと笑えば昼を食べに来たサラリーマンが頬を染めるほどに、見たこともないような、形容が間違っているかもしれないが本当に美しい男なのだ。
あの崎山が相川の地雷…?
「聞こえるんでしょ」
「崎山は無音なの!!何なら光の速さで動いてるわ!電波くらい!」
何それ、そんな人間いないわと呆れたがあまりに真剣なので、巴はただ頷いた。ここまで怯えるのだから、何かあるのだろうということだ。
「まー、とりあえず、俺のこと彼氏にしてよかったって思わせるから、無茶しないでくださいね」
「もう思ってるよー。イケメンでー、頭良くてー、料理も出来てー、将来有望。あと見る目もある。とんだ棚ぼたじゃん」
そう言う相川と巴は顔を見合わせて、そして笑った。

後日、巴とのことがあっさりバレて相川と1週間以上、連絡が取れなくなり、その代わり崎山が店に足繁く通い、巴を説得するという謎の光景が見られたのは言うまでもない。