いろはにほへと

いろはseries


- 39 -

「俺としては神原さんに感謝したいけど」
雷音は万里の前合わせをズラすと、そこから覗き見えた胸元に舌を這わせた。万里が驚いて身体を震わすと、雷音が小さく笑った。
「ごめん、急だった」
雷音はスーツのジャケットを脱ぐと床に落として、ネクタイを緩めた。だが万里が雷音の手を押し退けそのネクタイを引っ張ると、雷音の腰に足を回して引き寄せた。
そして万里がそのままベッドに寝転がったので、雷音は慌ててベッドに手をついた。
「あんたがスーパーマンみたいに助けに来てくれた時は、どこのお子ちゃまかと思ったわ。学生みたいな格好して」
「スーパーマンって。着の身着のまま戻ったので、服がなくて」
「可愛かったけどな」
雷音は万里が足を広げたことにより顕になった太腿を撫で、万里の唇に吸い付いた。そして開いた口の隙間から舌を捻じ込み、まるで食い合うように互いに舌を絡ませる。
すると雷音は腕を突くのをやめて万里の上に身体を預けると、着物の中に手を入れてアンダーウエアを脱がしにかかった。
ずるっと脱がしたそれをベッドの下に投げると、掌で勃ちあがた雄を潰すように撫でた。それに万里が猫のような声をあげたが、唇は離すことはしなかった。
舌を絡めて吸い付いて、堪能しすぎるほどに万里の口腔を犯した。そしてさすがにこのままでは酸欠になると、万里が雷音の肩を叩いてきたので、そこでようやく唇を離した。
「ちょ…殺す気?」
「食い殺したい…」
言ってふっと笑った。言われた万里も困ったように笑ったが、次の瞬間には雷音のスラックスのベルトを外してシュルッと抜いた。
「着物、無茶苦茶やん」
「ですね、ごめん」
雷音が緩まったネクタイに再度手を掛けると、万里はそれを制した。そしてスラックスをズラすと足の指を使って雷音のアンダーウエアを脱がす。
ずるっと成長しすぎた雄が顔を出したので、雷音は徐に万里の雄にそれを擦り付けた。既に蜜を垂らした陰茎は絡み合い、ぬちゃぬちゃと卑猥な音色を奏でる。
それだけで脳天まで直撃するような快感に、万里は歯を鳴らした。
「あ、ああ…やば…気持ちええ」
「ネクタイ、外しちゃダメなの?」
「ふふ…んっ…ダメ」
万里は雷音を引き寄せると抱きつき、雷音の足に足を巻きつけると軽い力で上下反対の体勢に持っていった。
「はは…さすが。こういうのって、コツがあるんですか?」
「せやね、コツやね。コツさえ掴めばウェイトも力も関係あらへんのよ」
万里は会話を楽しみながら雷音の上に乱れた着物のまま跨ると、形の良い顎に歯を立てながらネクタイをまた少し緩めた。
「男のネクタイ外すんに、興奮する日が来るとは思わんかったわ」
万里はそう言って雷音の首元に少しだけ吸い付き、舌を這わせた。
「下がマッパって間抜けじゃないですか?」
雷音はその柔らかな髪に指を絡ませ、手を伸ばして着物の合わせから見える胸の尖りを撫でた。万里が小さな悲鳴を上げて身体を震わせたので、気を良くして捏ねるようにして触ると指を噛まれた。
「おさわり禁止」
「えー」
唇を尖らす雷音に万里は唇の端に笑みを浮かべて、悪巧みを思いついたと言わんばかりに雷音のネクタイを解いた。雷音はそれに気が付いて、眉尻を下げて両手を前に差し出した。
「次は俺に好きにさせてくださいよ」
「ええよ。何でもしたるさかい」
万里は器用に雷音の両手首を拘束するようにネクタイで結ぶと、雷音のシャツのボタンを全て外して鍛え上げられた腹筋に舌を這わせた。そして徐々に身体を下げると、てらてらと光る雄に口付け咥えた。
喉の奥まで吸い込んで、頬の裏に亀頭を擦り付ける。そうしながら双嚢を手で揉み、蟻の戸渡りを中指で辿るように撫でるとじんわりと力を入れて強く押した。すると、濃い蜜が溢れ雷音の内太腿が痙攣した。
「っ…ちょ、マジで出る」
じゅぶじゅぶとわざと淫猥な音を立てながら吸い付き、裏側を舌で刺激してやると口の中でペニスが膨張した。
雷音は手を拘束されているので、それを止めることも出来ずに耐えるように歯を食いしばったが次の瞬間には身体が跳ねる衝撃を受けた。
「ちょ!!」
「大丈夫、入れたりせぇへんから」
万里の指が雷音の蕾の上を撫で、周りを刺激する。指先でそこを撫でられただけで、身体を捩って逃げようとしてしまう。
だが万里は雷音の片足に跨りペニスを咥えながら、雷音の蕾を撫でることを止めない。それどころか、雷音の足に自分の雄を擦り付けて腰を振り始めた。
それを見た瞬間、ああ、もう降参と雷音は快感を追うことに決めた。万里の口の中を堪能しながら浅くなっていく呼吸。
手が拘束されているので何かにしがみ付くこともできず、まるでのたうち回るように身体を揺らした。
「ああ!イくッ…ダメだ、出る…あ、っ!!!」
奥歯がギリっと鳴った。そして無遠慮に万里の口の中に欲を吐き出し、雷音は震える身体をどうにか抑えて頭を振った。
万里は眉間に皺を寄せながらも雷音の吐き出したものを全て飲み込むと、まだ緩く勃ち上がるペニスをベロっと舐め口を拭った。
「うーん…不味い」
「もっと、マシな感想」
「可愛いかったえ。気持ちよかった?」
「ほら、外して」
雷音は返事をせずに拘束された腕を万里の前に差し出したが、万里はそれを許さずにサイドテーブルに手を伸ばした。
「ローションあらへん?」
「ここ」
雷音がピローの下からボトルを取り出すと、万里はそれを雷音の手に垂らした。
「知ってる?このネクタイ、結構高いの」
「BAISERのNO.1ホストが何をケチ臭いこと言うてんの」
万里は足を広げて雷音の胸元辺りに跨ると、膝立ちになり足の間に雷音の手を導いた。雷音はされるがまま腕を入れると、万里の奥ばった窄まりにローションでてらてらに濡れた指を擦り付けると、ゆっくりと中へねじ込んだ。
「あ、…ん、あぁ…」
吐息は漏れたが、快感というよりは苦悩といった感じか。
それを証拠に呼吸を整えながら、どうにか指を飲み込もうとしている。快感よりも、違和感が勝っているようだった。
「狭い…。大丈夫?」
全然使っていないのだろう。雷音としたのが最後なら、本来の役割しかしていないはずだ。
異物感と違和感を覚えたのか、万里のペニスは頭を下げていた。雷音はごそごそと身体をズラすと、頭を下げたペニスに舌を這わせた。
「あ!!雷音!」
叱りつけるような声を出したが、腰を引くと後ろを犯す指を自ら奥深くへと入れ込むことになる。万里は浅い呼吸をしながら、雷音が開けた口の中へ期待でゆるく膨らんだ自らの雄を沈ませた。

「ひっ、ん…あ、あ、うっ…雷音ぉ…」
雷音の口淫に酔いしれながら後ろを拡げる指に眉根を寄せる。もう違和感なんてとっくになくなったようで、そこはあの底知れぬ快感を思い出したのか花が開くように雷音の指をどんどん飲み込んでいた。
万里は目を瞑って天を仰ぐように顔を上げて、小刻みに腰を振っていた。時折、快楽の芽となるシコリを指で強く押せば、鍛え上げられた腹筋が痙攣して雷音の咥内に苦味を帯びた蜜が溢れた。
「あ、はぁ…あかん、もう、もう無理」
万里は雷音の口から雄を引き抜くと、身体をズラして柔らかな尻で雷音のペニスを刺激した。
すでに淫靡な万里の痴態に熱を取り戻したペニスは一度出したとは思えないほど硬く熱り勃っていて、万里は妖艶な笑みを零すと、重さのあるそれを持ち上げて自分の蕾に押し当てた。
「は、あつ…」
「これ、外してくれないの?」
早く中に入りたいと腰を揺らす雷音が拘束された腕を掲げたが、万里は首を振ってゆっくりと雷音を飲み込んだ。
「あ、あー、おっきい…」
「ちょ、そんなん…言うなって」
ズブズブと蜜壺に喰われる自分の身体の一部を見ながら、雷音は腹筋に力を入れて波を乗り越えた。油断したら一気に持っていかれる。
相変わらず万里の中は堪え難い快感を呼び起こし、雷音のペニスを蠢く腸壁で犯しにかかった。
「あー、すご、気持ちええ」
万里は雷音の腹筋に手を突いて、中に入り込んだ雷音のペニスを自分の快楽のスイッチとも呼べるシコリに器用に当てながら、身体を浮かせて抽出を始めた。
ぬぷぬぷと扇情的な音色を奏でながら、雷音の上で淫らに踊る様は快感の坩堝に落ちた遊女だ。
「ああ…っ、あ…ぁ…っ!うあ、あっ…!あ…あ…!」
「あー、マジでヤバイ…っ」
自分で動くことも出来ず、だが襲い来る快感から逃れることなんて出来るわけもなく、喉を反らしてどうにか気をよそにやる。久々の人の中というのよりも、万里の中というのが快楽のスパイスとなっているのだろう。
このまま滅茶苦茶に下から突き上げて、犯し抜きたい欲求を堪えて雷音は手を伸ばして万里の頬を撫でた。
「これ、外してくれたら、もっと気持ちよくしてあげるから…」
だから外してくれない?と拘束された腕を見せても、万里は唇を舐めてダメと声を出さずに言うとゆっくりと腰を揺らし始めた。
「はー、あ…ぅぅ!!すご、奥…」
恍惚とした表情で言って、頬を撫でる雷音の指を口に咥えて舐める。すると、万里の中に居た雷音が一段と膨れ上がった。
「あ、もう、大きぃせんで…っ!!あ、ああっ!!あ、あ……ん……、やっ……」
散々、雷音が万里の中を指で弄り回したせいで、中のどこに当たっても強すぎる快感が万里の身体を襲った。
万里は雷音の太腿に手を付いて、仰け反るようにして腰を振る。その度に万里の勃ち上がったペニスから愛液が漏れ、雷音の腹を汚していった。
「あー、くそ…、ああ…っ!」
雷音は自由勝手に腰を振る万里に息をあげた。蠕動する万里の中はまさに名器そのものだ。蠢く中は雷音の雄を吸い込み、強く絞めつけ張り上がった雁高を小刻みに刺激する。
一瞬でも気を抜けば、愉悦の濁流に押し流されてしまう。雷音は奥歯を噛み締めてそれを耐えるが、万里は腰を回したり揺らしたり雷音の思いとは反対に快楽の波に飲み込ませようとしている。
「あぁ、あーっ、あぁ、ん…あ、無理ぃ、もう、い…く…、いちゃ…出るっ…」
膝を合わせて自身のペニスをギュッと握り、万里が身体を丸めた。ガクガクと震える身体に合わせるように、雷音を飲み込む中も今まで以上にうねり蠢いた。
「うあ…やば…、イくっ」
雷音の掠れた声に合わせるように万里が大きく震えた。すると、万里の手の隙間から熱い滾りがぼとぼとと漏れた。
万里は大きく息を吐くと、雷音の身体に倒れ込んできた。互いの心臓の音がシンクロする。まるで長距離を走り抜いたかのような鼓動の速さに、どちらともなく笑いが起きた。
「雷音の喘ぎ声、かいらしい」
「冗談…」
「あんはん、セックスするとき声が掠れるんよね。それが好き」
「あんたは驚くほど、淫靡になるよね」
雷音は呼吸を整えると、万里の頭にキスを落とした。
「これ、いい加減に解いて欲しいんだけど?次は俺の好きにさせてくれるんでしょ?」
万里は気怠そうに目を上げるとゆるやかに笑い、見るも無残になったネクタイを解いた。