- 19 -
「やだ、やだ!気持ち良いっ!あ、いく、いっちゃう!龍大、指、指して、前だけじゃ、無理…!!」
龍大はその言葉に笑みを浮かべると威乃の中に入る指を増やして激しく動かし始めた。中で腫れるしこりを撫でながら犯すように指を出し入れすると、威乃が内太腿を震わせ始めた。
それを見た龍大が威乃の手を掴んでペニスから離させると、有無を言わせず限界までパンパンに腫れ上がる威乃のそれを咥えて喉奥まで一気に吸い込んだ。
「う、あああああ!だめ!やだ!ああ!!いく、いっちゃう!いく!龍大っ!!ああああ!!!」
悲鳴に近い声を上げて熱を吐きだしながら何度も跳ねる威乃の身体を押さえて、最後の一滴まで飲み干すように吸い込んだ。
力の抜けた威乃のペニスから口を離すと、軽く意識の飛んでいる威乃の足を持ち上げ、今度は自分の番とばかりにゆっくりと威乃の中に身体を沈めた。
「あああああ、おっき」
「はー、堪らん」
細胞が絡みつく。扇動して飲み込んで奥へと誘う。進んでもまだ足りないと吸い込んでくるのだ。
身体が隙間なく密着したところで奥を突くように、まだ先へ捩じ込むように腰を穿つと威乃の足が跳ねる。腰を付けられたまま奥を突かれるのが堪らないのか、声もなく震えて力のなくなったペニスから蜜を漏らす。
オーガスムを何度も繰り返しているのか、虚になった目のまま龍大の腰に足を回した。
「りゅうだ、ぃ。あ、あああ、いい、すごい…今日、やばい…っ」
「うん、威乃…」
舌を絡ませながらトントンと威乃の奥を突く。それに返事をするように威乃は止まらぬ愛液を零し、身体を震わせた。
「んっ!!」
ビクッと身体を撥ねさせてペニスから蜜を飛ばす。威乃の腰を掴んで身体を起こすと、下から突き上げ始めた。
「あぁ、ぁ、まっ…て…!無理、無、理、ぁ、これ……ああ、あ、あ、ぁ…!…あっ…!!」
絶頂に達して龍大の腹を汚すが、龍大は止まることなく威乃を攻める。快感が強すぎて逃げようとする威乃の身体を抱きしめて、声にならない声を上げる威乃の口を塞いで舌を絡める。
大切にしたいのに時々、壊したくなる。快感に狂わせて龍大なしで生きていけない身体になればいい。
「威乃…」
ぎゅっとしがみつく威乃の肩口に思わず噛みついて、押し寄せた熱を爆発させるように龍大は威乃に欲望をぶつけた。
「名取のおかげで次の試験は余裕かも」
クラスメイトの小山田と話しながら学校を出るとポンっと肩を叩かれた。振り返ってそこに居た人物に血の気が引いて思わず辺りを見渡した。
「え!?なんで!?一人?え、初歌くん、夏色は?」
「一人だよ」
何てことないように言われて、にっこりと微笑まれても落ち着かない。いつもと違うハルの様子に小山田がまたトラブルかと脇を突いてきた。
「あ、えっと、幼馴染の初歌くん」
「どうも、初歌です」
小山田に人当たりの良さそうな笑顔を向けて頭を下げる。
極楽院の名前は悪目立ちするので初歌は基本的に苗字を名乗らない。それに慣れたハルもあえて苗字は言わなかった。
「あ、どうも、クラスメイトの小山田です」
「何かあったの?」
ハルは小山田に構ってられず初歌を出てくる学生から守るようにそこから離れた。猛獣がいないからこそ余計に妙な緊張感が出てしまう。
怪我なんてさせるわけにはいかないので、全神経を集合させる。
「えっとね、お迎えだよ。夏色が呼んでる」
思わず喉が詰まる。夏色は特段、何も言ってなかった。いや、同じ住居にはいるが談笑するほど仲良く話している訳ではないので、全く心当たりがない。
そもそもハルが家を出る時は二人はまだ寝ていたので、今日は朝は逢っていない。昨日の夕飯時も何も言ってなかった。
「呼んでるって…」
何で?と言いかけて口を閉ざした。そしてジーンズのポケットからバイクのキーを出すと小山田に渡した。
「乗って帰ってくれん?」
「お前の愛車を俺に託すとは」
「安全運転でね、ダーリン」
「おまかせあれ、ハニー。また明日な」
変に探りを入れてこないのは小山田の良いところだ。ハルは息を吐くと初歌の手を引いて歩き始めた。
「僕、バイク乗りたかった」
「冗談やろ!?俺、死にたくない」
「下手くそじゃないでしょ」
下手くそじゃなくても、何かあればヤバいと思っているときに限って何かあるものだ。自分が道交法を遵守して安全重視で走っていても、周りが何らかのアクシデントで車ごと突っ込んでくる可能性はゼロではない。
「俺はリスクは避けるタイプなんで」
「えー。じゃあ、歩くのー?」
「電車、かな」
「じゃあ、威乃ちゃんも」
「え?」
思わず立ち止まって振り返る。
「威乃?」
「うん、夏色がね、二人を呼んでるんだよ」
マジかと、口は動いたが声が出なかった。
夏色が二人を呼び出したのは多分、これで2度目だ。一度目は中学の時に起こした他校生徒との大喧嘩。結果、夏色に助けを求めることとなった。
そのタイミング最悪で夏色と初歌が日本を離れる少し前のことで、二人は出国を延期せざるを得なくなった。
何よりも優先している初歌が色々と準備して計画を立てていた、それに水を差す形になってしまい夏色は激怒。呼び出された二人は本気で殺されるかもしれないと思ったやつだ。
「コンビニ!コンビニ行こう!」
あちこち街並みを見ながらご機嫌の初歌を他所目に護衛のように歩くハルと威乃は困惑気味だった。学校終わり、ハルから今すぐ出てこいと連絡をもらった威乃は、学校の前にいた二人を見て手に持っていた鞄を落とした。
威乃もハル同様、初歌が一人でいることに言いようのない恐怖を感じたのだ。恐怖というのは”初歌に何かあったらどうしよう!”という恐怖だ。
「おでんないの?」
「時期やあらへんやん」
威乃が呆れたように言うが、日本を長らく離れているとそういう食べ物が恋しくなるのか。
「ハルに作ってもろたらええやん」
「でも、お雑煮も捨てがたい」
「なんで雑煮」
季節感というよりも時期がおかしいだろう。時差のせいか?いや、何ヶ月単位で狂う時差って宇宙か。
「あと、お好み焼きとすき焼き、えーーっと」
威乃はハルに顔を寄せると「飯でも行くん?」と聞いた。初歌のこれではそうなるだろうが、そんなわけがないだろうとは思う。
飯に行くから二人を呼んでこいなんて、夏色が初歌に言うわけがない。だが一人でいるのは本当にどういうことなのか、さっぱり見当がつかない。
そんな人の心配をよそに、初歌がお菓子やらジュースやらをハルが持つカゴに入れ、小腹が減った威乃もおにぎりとお菓子を入れた。ハルは水を買うだけだった。
「夏にぃ、朝とかなんか言うてへんかったん?」
「ないな」
「わざわざ呼び出すって、これってどこ行くん?」
「さぁな」
前を歩く初歌を見るがどこへ向かっているのか分からない。あまり立ち入らない地域で一等地のオフィス街でもある。
大きな会社が多いが時間帯のせいか人通りは少ない。
「え、初歌くん?」
どこ行くの?と呼び止めようとすると、あるビルの前で立ち止まった。見ると真新しさのある黒っぽいビルだった。
コンクリート打ちっぱなしの壁はカラーコンクリートで黒くしていて、入り口のドアは特殊ガラスなのか中が見えない。入り口に大きめの銀のプレートが掛かっていて、見ると”gokuraku.co"と彫り込まれいた。
「何ここ」
「んー?僕のビル」
僕の?と威乃と二人、顔を合わせる。それは極楽院にしては小さくない?というものだが、二人が知らないだけでそこの土地の資産価値からいえば億単位ではある。
入り口の電子パネルに初歌が手を当てるとカチッとロックが外れる音がした。設備は最新ってわけかと壁に埋め込まれている小さなカメラレンズを見て思う。
監視体制もバッチリ。防犯対策も問題ないということだ。いや、思うだけ無駄だ。極楽院だ。
「地下だよー」
ビルの中に入ると初歌の声が響く。高い天井で受付カウンターもあるが無人。エレベーターを見る限り5階建てだが、オフィスが入っている感じでもない。
遊ばせるにしては勿体なさすぎないかと、威乃は思った。
「無人じゃん」
「出来たばっかりなの。そのうち貸しに出すよー」
「へぇ、そうなん」
広めのエレベーターに乗ると初歌が地下のボタンを押す。威乃と二人、心拍数が自然とあがっていくのが分かった。
「重くない?」
両手に荷物の威乃とハルに伺ってくるが、二人して馬鹿みたいに首を振った。
「はい、到着」
エレベーターを降りると廊下が続いていて、その先に両開きのガラスのドアが見えた。初歌が近づくと自動でドアは開き、更に奥にドアがある。
いやに厳重だなと思ったが、次のドアが開いた瞬間、二人で息を呑んだ。
広いフロアに敷かれたマット、格闘技でよく見かける畳サイズのマットが敷かれていて、その近くにはマルチファンクションマシンやサンドバック、キックミットが置かれている。
「ええ…?」
何これと声に出しかけたところで、向こう側から出てきた夏色に二人して口を閉じた。
「夏色ー、連れてきたー」
るんるん、まるでお遣いの出来た子供のようにはしゃぐ初歌と対照的に二人して視線を泳がす。謝るか?いや、何に?とあれこれ考えていると夏色が顎で二人を呼んだ。
靴を脱いでフロアに入ると初歌が二人の荷物を持って、トレーニングマシンに腰掛けて袋を漁る。それ、テーブルじゃないよと思いながら夏色を見る。
いや、こわ。威乃は思わずハルを見た。本当に兄弟かよと。
「えっと、用事?」
怒られるようなことは最近はしてませんよと、引き攣った顔でハルが夏色を見ると奥を指差した。
「奥にロッカーあるから適当に着替えてこい」
「え?」
「5分後集合」
え?とか何が?とか聞く前にハルが威乃の腕を掴んで奥に向かう。それに「え?」とか「なんで!?」を威乃がハルに向けて言っているが答える時間も惜しいくらいだ。
「え!?ハル!?」
「うっさい!時間制限かけられてるときは従え!」
いや、軍隊かよ!と言いかけたが、ここは大人しく従うのが賢明だと二人でロッカーに飛び込んだ。